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2013 年度 実施状況報告書

疾病負担の将来推計に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24790520
研究機関東邦大学

研究代表者

北澤 健文  東邦大学, 医学部, 助教 (30453848)

キーワード疾病費用
研究概要

わが国における疾病別の社会的費用負担については、患者調査や社会医療診療行為別調査等に基づいた推計が行われているが、今後の人口の年齢構成の変化等を考慮した将来推計を行った研究は少ない。包括的な経済分析のためには、直接的な医療費に加えて、通院や入院に伴う間接的な経済損失や、早世に伴う生産性損失も考慮した疾病費用(Cost Of Illness:COI)の試算が必要である。本研究は、我が国におけるがんを中心とした疾病別のCOI推計とその将来推計を行い、それぞれの社会的経済負担の特徴を明らかにすることを目的としている。
COIは直接費用、罹病費用、死亡費用の3つの費用から構成される。直接費用には、疾病罹患によって直接生じる入院費、検査費等の医療費が含まれる。罹病費用は治療によって失われた労働の対価であり、疾病に伴う入院や通院のために失われる機会費用が含まれる。死亡費用は死亡に伴う人的資本の喪失であり、死亡した当人が死亡していなければ将来にわたって稼ぎ出したと考えられる所得の合計額として求める。
将来推計は、以下の4つの方法で行った。すなわち、(1)健康関連指標を2008年の値で固定し人口構成の高齢化のみを勘案した方法(固定型推計)、(2)人口構成の変化に加え、受診率等の健康関連指標の変化を線形近似により得た方法(線形型推計)、(3)対数近似により得た方法(対数型推計)、(4)健康関連指標毎に2つのうち最適な近似を選択した方法(混合型推計)である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

近年死亡者数が増加している乳がん(ICD-10:C50)・子宮頸がん(同C53)・前立腺がん(同C61)の各がんについて、その社会的負担の将来推計を行った。まず、2008年のCOIは、乳がん6,520億円、子宮頸がん1,455億円、前立腺がん2,759億円と推計された。将来推計の結果、乳がんのCOI推計額は、固定型:7,050億円、7,030億円(それぞれ2014年、2020年の推計額。以下同様)、線形型:7,130億円、7,440億円、対数型:7,000億円、6,990億円、混合型:7,130億円、7,430億円であった。子宮頸がんのCOI推計額は、固定型:1,664億円、1,831億円、線形型:1,446億円、1,448億円、対数型:1,566億円、1,599億円、混合型:1,487億円、1,485億円であった。前立腺がんのCOI推計額は、固定型:3,429億円、3,796億円、線形型:5,567億円、6,578億円、対数型:4,548億円、5,000億円、混合型:4,826億円、5,485億円であった。内訳をみると、乳がん、子宮頸がんでは死亡費用が、前立腺がんでは直接費用がCOIの大部分を占めていた。乳がんでは50歳~60歳代の死亡数増加に伴い、死亡費用の増加が見込まれ、COIの緩やかな増加が見込まれた。子宮頸がんでは30~40歳代と80歳以上の高齢者の死亡数増加が見込まれ、COIは微減あるいは横ばいに推移すると推計された。前立腺がんは、65歳以上人口の増加に伴いCOIの増加傾向も続くと見込まれた。

今後の研究の推進方策

これまでの研究で構築したCOIを推計するためのデータセットの整備を継続する。特に、新たに公開された官庁統計の統計表を確認し、必要に応じてデータをデータセットに追加する。また、固定型推計、線形型推計、対数型推計、混合型推計の4つの方法それぞれに応じて構築してきたCOI将来推計ワークシートの整理を進め、より効率的な算出が可能となるよう、各シートの算出ロジックの検証と改善をすすめる。
また、引き続き国内外のCOI算出に関する先行研究を対象とした体系的な調査を行う。また、カナダなど諸外国におけるCOI推計結果の医療政策策定への活用状況を明らかにする。
これまでの研究で得られた成果を、国内外の学会において発表する。また、成果をまとめた論文作成をすすめる。

次年度の研究費の使用計画

統計データの分析処理に使用するコンピュータをはじめとする情報処理機器と周辺機器のほか、統計解析ソフトウェアの購入を平成26年度に予定しているため。また、平成26年度に研究成果の発表を国内外の学会において行う予定があるほか、論文投稿も予定しているため。
物品費は、統計データの分析処理に使用するコンピュータをはじめとする情報処理機器と周辺機器のほか、統計解析ソフトウェアの購入に支出する。また、旅費は研究成果の発表を国内外の学会において行う際の航空券購入や宿泊費に支出する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Cost of illness of the stomach cancer in Japan - a time trend and future projections.2013

    • 著者名/発表者名
      Haga K, Matsumoto K, Kitazawa T, Seto K, Fujita S, Hasegawa T
    • 雑誌名

      BMC health services research

      巻: 13 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1186/1472-6963-13-283

    • 査読あり
  • [学会発表] 肺がんの疾病費用(Cost Of Illness)に対する高齢化の影響

    • 著者名/発表者名
      芳賀香代子、松本邦愛、北澤 健文、長谷川 友紀
    • 学会等名
      第15回日本医療マネジメント学会学術総会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター(岩手県)
  • [学会発表] 子宮がんCost of Illness(COI)の将来推計

    • 著者名/発表者名
      瀬戸加奈子、松本邦愛、芳賀香代子、上園由希子、藤田茂、北澤健文、長谷川友紀
    • 学会等名
      第15回日本医療マネジメント学会学術総会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター(岩手県)
  • [学会発表] 前立腺がんの疾病費用(Cost Of Illness)の将来推計

    • 著者名/発表者名
      北澤健文、芳賀香代子、松本邦愛、長谷川友紀
    • 学会等名
      第15回日本医療マネジメント学会学術総会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター(岩手県)
  • [学会発表] The future projection of Cost of Illness(COI) of Lung cancer in Japan

    • 著者名/発表者名
      Haga K, Matsumoto K, Kitazawa T, Hasegawa T
    • 学会等名
      International Society for Quality in Health Care (ISQua) 30th International Conference
    • 発表場所
      Edinburgh International Conference Centre (Scotland)
  • [学会発表] 乳がん・子宮がん・前立腺がんの社会的負担

    • 著者名/発表者名
      北澤健文
    • 学会等名
      日本医療・病院管理学会第320回例会
    • 発表場所
      東邦大学医療センター大森病院(東京都)

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公開日: 2015-05-28  

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