研究課題/領域番号 |
24790524
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
籔脇 健司 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (20347280)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 高齢者 / 環境 / 地域連携パス / 作業療法 |
研究概要 |
本研究課題の目的は,回復期リハビリテーション(以下,回復期リハ)を受ける高齢者が,地域連携アプローチによる環境支援を通して満足感の高い在宅生活を送るための包括的環境支援地域連携パス(以下,環境支援パス)を開発し,その効果を検討することである.平成24年度は,環境支援パスの暫定版を作成するためのデルファイ法による検討を開始するにあたって,パス開発の必要性を示すために実施した介入効果研究の結果を分析し,在宅高齢者の環境ニーズを明らかにすることが必要となり,その作業を優先して実施した. 介入効果研究の対象は,全国8施設の居宅サービスを新規利用する65歳以上の要支援・要介護高齢者60名であった.層化ブロックランダム割付法を用い,この60名を包括的な環境支援を行う介入群と各施設の標準的なサービスのみを提供する統制群の2群に割り付けた.介入期間は3か月とし,介入群には作業療法士が中心となり,研究代表者らが開発した包括的環境要因調査票図を用いた実践を行った.アウトカム尺度にはSF-36とN-ADLを用い,開始時と3か月後に実施した. 両群のアウトカムの変化量をMann-Whitney U testによって検討したところ,SF-36のPF,RP,RE,RCSの4項目で介入群のスコアが有意に向上していた(p<.05).効果量は,検出力1-βを0.8,有意水準αを0.05とするとd=0.75と非常に大きかったことから,回復期から生活期に移行する高齢者を対象とした環境支援パスの開発は,きわめて有効であると考えられる.環境ニーズは介入群の75.9%に回答があり,外出しやすい環境(41.4%)を筆頭に,集まって人と交流しやすい環境(20.7%),人の役に立てる環境(13.8%)と続くなど,相互交流環境因子に関するニーズが多く,環境支援パスを開発する際には,この点を重視する必要性が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年度は,回復期リハ病院と居宅サービス施設に勤務する各専門職をメンバーとしたデルファイ法や検討会議を実施し,環境支援パスの暫定版を作成する予定であった.しかし,デルファイ法を実施するための検討用紙を作成するために,在宅高齢者の環境ニーズを明らかにすることが必要となった.その研究を実施した分,デルファイ法による検討を開始することができず,研究の進行が遅延した.
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今後の研究の推進方策 |
現在,回復期リハ病院と居宅サービス施設に勤務する各専門職をメンバーとしたデルファイ法を実施するための検討資料を作成し,検討を依頼する実務経験10年以上の医師,看護師,医療ソーシャルワーカー,理学療法士,作業療法士,介護福祉士,介護支援専門員の確保が進んでいる.今後の研究を推進するために,平成24年度に採用しなかった研究補助者を平成25年度予定分と合わせて採用するなど,事務作業の効率化を図る.また,デルファイ法による検討の遅延が生じないよう,検討プロセスの工夫や妥当性の検討をWebベースで行うなどの方策を考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,検討会議実施に必要となる旅費や謝礼が発生しなかったことと,研究補助者を採用しなかったことによるものである.よって平成25年度は,本来その年度に予定していた旅費,謝礼,人件費と合わせて,これらを執行する.その他の変更は,特に予定していない.
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