本研究課題の目的は,回復期リハビリテーション(以下,回復期リハ)を受ける高齢者が,地域連携アプローチによる環境支援を通して満足感の高い在宅生活を送るための包括的環境支援地域連携パス(以下,環境支援パス)を開発することであった.平成26年度は,前年度に作成した環境支援パスの原案をWebアンケートシステムによるデルファイ法を用いて検討し,環境支援に関するオーバービューパス(医療者用)を完成させた. デルファイ法の検討メンバーは,回復期リハ病院と居宅サービス事業所に勤務する実務経験10年以上の医師,看護師,ソーシャルワーカー(相談員),理学療法士,作業療法士,介護福祉士,介護支援専門員の計35名であった.有効回答は31名(88.6%)から得られ,所属施設の内訳は,回復期リハ病院13名,居宅サービス事業所18名(介護老人保健施設5名,通所リハビリテーション2名,通所介護6名,居宅介護支援事業所5名)であった. 環境支援パスの原案は,安心生活環境4領域,相互交流環境4領域,家族環境2領域について,回復期リハ病院の入院から,居宅サービスを利用して3か月経過するまでの期間における各達成目標とそれに対応する合計26項目のタスクによって構成される.この原案をオープンソースのシステムであるLime Survey(有限会社ディアイビィ社製)を活用したデルファイ法(Webアンケート)によって検討した. 具体的には,検討メンバーが各達成目標・タスクの妥当性を検討し,同意の程度を5段階で採点した.それぞれの達成目標等の合意判定基準は,同意の程度の中央値が5に達し,四分位数間領域が1.0以下であることとした.その結果,7領域の達成目標と14項目のタスクが検討メンバー間で合意された.以上より,地域連携アプローチを通した高齢者の環境支援を推進できるオーバービューパス(医療者用)を開発することが可能となった.
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