ドラッグデリバリーシステム(DDS)においてポリエチレングリコール(PEG)はナノキャリアの血中安定性を向上させるために最も汎用されている表面修飾用高分子であり、PEGを修飾したナノキャリアの一部は臨床で使用されている。しかし、PEG修飾ナノキャリアを複数回投与することによって血中滞留性が著しく損なわれるAccelerated blood clearance(ABC)現象が知られており、DDSキャリアの開発において障害となっている。本研究では生体内共焦点顕微鏡を用いてABC現象の評価方法の確立と回避方法の検討を行うことによりDDSキャリアの開発への寄与を目的とした。 最終年度である平成26年度ではABC現象の回避に着目した。ABC現象は脾臓B細胞、肝臓のクッパー細胞が関与していることが知られているので、脾臓、肝臓の貪食細胞を除去するクロドロネートリポソームの事前投与により、ナノキャリアを投与する前に一時的に細網内皮系を抑制して、ABC現象を回避することを試みた。さらにキャリアのサイズや初回投与量の検討を行った。キャリアの構造についても架橋率の違いやリガンドの有無などによる影響を生体内共焦点顕微鏡やIgM抗体量の測定によって検討した。また、FRET(fluorescence resonance energy transfer)の手法を取り入れてキャリアに搭載したsiRNAのintact性の評価法を確立し、ナノキャリアおよび内包薬物の安定性への影響や代謝の経路を調べた。
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