研究課題/領域番号 |
24790531
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
藤 秀人 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (90346809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生体リズム / 抗リウマチ薬 / 時間治療 / 臨床研究 / メトトレキサート |
研究概要 |
臨床研究では、多施設無作為化二重盲検比較試験を実施した。関節リウマチ患者を対象に、既存の投与方法を遵守する既存型群と投薬時刻を寝る前に変更した時間治療型群の2群に無作為割り付けを行った。これまでに29例のエントリーが終了し、時間治療型群で7例、既存型群で8例の被験者が解析対象となった。本試験では、被験者を無作為割り付けを行う前に、服薬コンプライアンスやリウマチ症状などの状況を約1~2か月間かけて観察している。そのため、無作為割り付けの対象とならない被験者が予想よりも多く出ている。これについては、現在改善策を講じ、被験者エントリーのためのスクリーニングを慎重に行っている。現在試験が終了している被験者を対象に、中間解析を行った結果、平均年齢では時間治療型群で高かったが、性別比や投与量では両群間に有意な差異は認められなかった。治療効果の指標であるEULAR改善基準の中等度以上となった被験者は、既存型群で37.5%、時間治療型群で71.4%であり、約2倍の有用性が時間治療によってみられている。 基礎研究では、通常飼育と、時間制限摂食、恒明環境条件下で飼育したラットを対象に、ウシII型コラーゲン感作による関節炎スコアの評価を行った。その結果、恒明環境条件下で飼育したラットでは、他の飼育環境群と比較し、関節炎増悪の程度が緩徐になることが明らかとなった。光刺激によって生体内での分泌や生合成が変化し、その量に日周性が認められるものには、複数の生体内成分が挙げられる。このうち炎症などの制御にかかわるものが、恒明環境条件下のラットにおける関節炎の重症化の低減に関与していると考えられる。このような観点より、数種の生体内成分を選定した。次年度、これらの因子と関節炎の重症化との関連及び日周リズムと関節炎との関連性を明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二重盲検比較試験による臨床研究では、中間解析を実施し、統計学的な有意性は示されていないものの、時間治療において有用性が高いことが見られている。次年度以降に、エントリー症例の拡充を行い、抗リウマチの時間治療に関する有用性を示せるものと期待している。 基礎研究による生体リズム診断法では、関節リウマチ治療の時間治療において重要なターゲット因子を複数選定した。これらをより詳細に検証することで、個別化時間薬物療法の開発が期待できるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究では、多施設無作為化二重盲検比較試験の進捗を促進させるために富山大学病院における診療科の追加と、富山県下において関節リウマチ治療を行っている医療施設での試験実施に向けた取り組みを検討している。平成25年度に、被験者のエントリーが終了できるようにしたいと考えている。 基礎研究では、現在選定している関節炎影響因子と関節炎の日周リズムとの関連性を解明し、これらの実験より関節リウマチにおける炎症の日周リズム形成にかかる生体成分を生体リズムマーカーとする。また、得られた生体リズムマーカーが、臨床において採取が困難である場合は、代替生体リズムマーカーの探索を行う。 得られた生体リズムマーカーもしくは代替生体リズムマーカーを用いて、抗リウマチ薬の投薬タイミングの設定が可能か否か確認するために、以下の実験を行う。関節炎モデル動物を対象に、種々の生体リズム操作を行い、多様な生活リズム環境にある各実験動物の生体リズムをマーカーにて同定し、同定された周期から個々に最適と考えられる投薬時刻を選定する。そして、個々に決定した投薬時刻に抗リウマチ薬メトトレキサートを投薬し、治療効果の有無を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
<臨床研究>RA患者を対象に、無作為に既存の投薬方法群と時間治療群の2群に分け、時間治療の有効性及び安全性を比較検討する。本年度は、40症例のエントリーを目標に臨床研究を実施する。主要評価項目の有効性にはDAS28とEULAR改善基準及びmHAQなどを、有害事象では白血球減少及びKL-6などを評価する。副次的項目としては、血清サイトカイン、IgG-RF、抗CCP抗体などを測定する。 <基礎研究>以下の活動リズム操作動物を用いて、平成24年度に生体リズムマーカーの関節リウマチ症状の日周リズムと当該マーカーの周期性の相動性・頑強性を評価する。活動リズム操作動物は、通常飼育群:明暗周期 (12hr: 12hr) 環境下、自由摂食飲水と、時間制限摂食群:明暗周期 (12hr: 12hr) 環境下、自由飲水、時間制限摂食(給餌の時刻を様々に設定することで、多種多様な活動リズムを有するモデルを作成できる。)、恒明環境群:恒明環境下、時間制限摂食、自由飲水(生体リズム形成に重要な役割を有するメラトニンの分泌を消失させたモデルを作成できる。)とする。 また、定期的な投薬マーカーの採取は、採取部位によって、ときに臨床的に困難である可能性が考えられる。そのため、比較的採取が容易であり患者に対する侵襲が少ない口腔粘膜細胞や採血で得られる白血球数、副腎皮質ホルモン濃度等や体温、血圧の日周リズムを測定し、投薬マーカーの代替として応用可能か否かを検討する。検証方法としては、通常飼育群や時間制限摂食群など活動リズム操作動物を用いて、薬物の標的生体内成分とその他種々の生体成分の概日リズムをモニタリングし、標的成分と相同性のある生体成分を抽出する。ここで得られた代替マーカーのモニタリングによって、薬物の至適投薬タイミングの選定が可能か否か評価することで、開発した生体リズム診断法の適応性や有用性を明らかにする。
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