研究課題/領域番号 |
24790533
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
今泉 直樹 琉球大学, 医学部, 助教 (10547384)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / グルタチオントランスフェラーゼ / 酸化ストレス / ミトコンドリア透過性遷移 / 肝障害 |
研究実績の概要 |
本研究はミトコンドリア膜結合性グルタチオントランスフェラーゼ(mtMGST1)が酸化ストレス性ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)孔(pore)の構成成分として働いているかどうかを明らかにする事を目的としている。前年度までに、MPT poreの開口には1、mtMGST1のジスルフィド結合、2、adenine nucleotide translocase(ANT)とcyclophilin D との高分子蛋白複合体の形成、3、ミトコンドリア膜の構成脂質であるカルジオリピンが関与していることを明らかにした。また、ミトコンドリア内膜と外膜に存在するmtMGST1は活性化に違いがあること、加えて分子量、等電点のわずかな違いについて明らかにした。 しかし、MPTとmtMGST1の関連性をより詳細にするためには、さらなるミトコンドリア内膜の精製mtMGST1が必要となったため、今年度は現状の精製方法よりも効率的で回収率の高い精製条件を検討した。当初、ゲノムデータベースよりmtMGST1と推測されるターゲットの検索を行ったが決定に至る情報が得られず、ラット肝臓ミトコンドリアからの内膜mtMGST1の効率的な精製方法の検討を行うこととした。この検討により最適と考えられる可溶化剤、pH、緩衝液、各種カラムへの吸着条件を設定した。さらに、mtMGST1はGSHカラムへの親和性があり、このカラムを用いることによって内膜と外膜のmtMGST1を分離することが可能であることが示唆された。 一方、もう一つの計画である酸化ストレス性肝障害モデルの検討を行うため、アセトアミノフェンを用いた実験系の有用性を検討した。ラットよりもスモールスケールのマウスでの肝毒性を評価するため、マウスより分離した初代培養細胞を用い、酸化ストレス性肝障害とMPTの関係性についての検討を行った。この評価系において天然抗酸化物によりMPTの変化と毒性の軽減作用が確認され、天然抗酸化物が酸化ストレス性肝障害を抑えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では抗体作製を行う予定であったが、抗原となるタンパクの精製量が十分ではないため計画を変更し、精製方法の検討を行った。一方、ガラクトサミン/LPSよりも実際に病態として問題となっているアセトアミノフェン肝障害モデルを用い、天然抗酸化物質の酸化ストレス性肝障害軽減作用について検討を行った。研究の計画の変更などにより達成度は当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続きmtMGST1の精製と機能、その役割について精製タンパクや培養細胞を用いた検討を中心に行う予定である。精製mtMGST1を用いたMPTとの関連性を確認する一方、マウス初代培養肝細胞を用いた酸化ストレス性MPTの評価系も検討し、メカニズムの解明を行う。また、GST活性化剤、阻害剤を用いた動物実験についても同様に進める。よって、初代培養肝細胞、精製、人工膜再構成等に用いる試薬、動物購入費に研究費を使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の変更や当該年度計上されていた海外学会渡航費が国内学会渡航費となったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度計上されていた研究費について、一部を次年度分の研究費として使用する。使用内容については当該年度の研究計画と同様で大きな変更は無い。MPT関連タンパクの精製やin vivo実験に用いる動物およびその管理費、機能解析に用いられる生化学実験試薬、電気泳動関連試薬、細胞培養試薬類、チップ等の消耗品として使用予定である。
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