研究課題/領域番号 |
24790535
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
細畑 圭子 自治医科大学, 医学部, 助教 (10547962)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バイオマーカー / 2型糖尿病 / 腎臓 / 糖尿病性腎症 / 慢性腎臓病(CKD) / 尿中アルブミン / OLETF ラット / 尿細管障害 |
研究概要 |
本研究は急性腎障害早期検出マーカーとして見出した尿中vanin-1が慢性腎障害の進展過程においても検出されるか否かを明らかにすることを目的とした。本研究では2型糖尿病モデルラットとして雄性OLETF(Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)ラット、およびそのコントロールである雄性LETO(Otsuka Long-Evans Tokushima)ラットを用いて、糖尿病発症前から飼育を開始し糖尿病性腎症後期まで経過観察を行う予定である。経過観察期間が長いため、研究期間を2年とし、平成24年度は初年度であった。 平成24年度は尿中vanin-1が糖尿病性腎症発症の早期に腎障害を検出し得るか否かを明らかにするために、糖尿病発症前である生後4週齢から水と固形試料を自由に摂取できる条件下で飼育を開始し4週間毎に24時間蓄尿による採尿と尾静脈からの採血を行い、早期腎症を呈する30週齢までの組織評価を行った。OLETFラットは生後14週齢から血中グルコース濃度がコントロールであるLETOラットに比べ有意に増加した。22週齢から尿中アルブミン濃度が有意に増加したが、PAS染色を用いた腎組織学的評価では、14週齢からすでに尿細管の変性、刷子縁膜の脱落および糸球体硬化を認めた。尿中vanin-1濃度をELISAにて定量したところ、尿中アルブミンや既存の尿細管障害マーカーであるNAGよりも早期に有意な増加が認められた。 尿中vanin-1は既存マーカーである尿中アルブミンやNAGが顕性化する前の組織学的な腎障害を検出しうる新規バイオマーカーであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は尿中vanin-1が既存マーカーである尿中アルブミンよりも早期に検出可能であるか否かを明らかにすることを目標とし、その目標に到達した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では尿中vanin-1が糖尿病性腎症発症過程において早期に検出しうるバイオマーカーであることを示すことができた。平成25年度は引き続きOLETFラットおよびLETOラットを飼育し、尿中vanin-1の検出パターンを詳細に検討する。すなわち、尿中vanin-1が腎症早期のみ検出されるマーカーであるのか全病期にわたって検出されるマーカーであるのかを明らかにする。さらに、後期腎症モデルの腎組織と平成24年度で得た早期腎症モデルの腎組織を用いて、vanin-1の腎内局在、タンパク発現量、mRNA発現量を比較することにより、糖尿病性腎症進展過程におけるvanin-1の尿中漏出のメカニズムを明らかにする。 vanin-1は酸化ストレスにより誘導されるGPIアンカー型タンパクである。そこで、得られた腎組織の酸化ストレスを評価するため、酸化ストレスマーカーである8-OHdG量を定量する。さらに免疫染色法によりvanin-1の染色部位と8-OHdGの染色部位を観察することにより、糖尿病性腎症の酸化ストレス亢進にvanin-1が関与するか否かを明らかにする。必要に応じて、ブタ腎由来尿細管上皮細胞株LLC-PK1細胞あるいはヒト胎児腎由来HEK293細胞遺伝子導入系を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
【設備備品費】本研究計画を実施するに当たり、必要な分析機器や実験装置は現有の設備を使用するため、新たに設備備品を購入する予定はない。(計0千円) 【消耗品費】分子生物学的解析および病理組織観察に要する試薬・消耗品、動物実験関連費および掲載が決定された場合の論文別刷り料を計上する。(計800千円) 【旅費】研究成果の発表のための国内旅費・外国旅費を計上する。(計300千円) 【その他】研究成果を学術雑誌に投稿するための英文校正料および投稿料を計上する。(計100千円)
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