研究課題/領域番号 |
24790536
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
田嶋 公人 城西国際大学, 薬学部, 准教授 (60406783)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ワサビ受容体TRPA1 / バニロイド受容体TRPV1 / 神経原性炎症 / ラット / マウス / 胃粘膜 / 機能性ディスペプシア / アリルイソチオシアネート |
研究概要 |
当該研究は、ストレス性胃機能障害である”機能性ディスペプシア (FD)”の治療薬開発を支える病態モデル動物の開発とそれらを用い既存消化器病薬の新たな薬効価値を見出すことを最終目標としている。そのため、平成24年度は「ヒトFD症状に類似したモデル動物をワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) にて作製する」ことを到達目標とし、以下の研究成果が得られた。 1. ワサビ辛味成分AITCは、現在TRPA1活性化薬として頻用されている。今回我々はAITCのラット胃粘膜適用により胃粘膜神経原性炎症を惹起したが、肉眼的な重篤な胃粘膜損傷に至らないことを見出した (田嶋らUlcer Research 39; 128-131, 2012)。 2. FDの病態成因として、バニロイド受容体TRPV1とワサビ受容体TRPA1発現知覚神経の異常興奮が推察されている。そこで、正常動物でのTRPV1とTRPA1による胃機能調節について解析した。その結果、(1) TRPV1活性化は胃酸分泌を抑制する(Okumi and Tashima. et al. Planta Medica 78; 1801-1806, 2012)(2) TRPV1活性化は胃運動を亢進する (田嶋ら 第86回日本薬理学会年会,2013)。(3) TRPA1活性化は胃粘膜血流を増大させることを見出した (Tashima et al. 7th International Symposium on Cell/Tissue Injury, 2012)。 以上より、AITCは胃粘膜神経原性炎症を引き起こすこと。また、TRPV1/TRPA1発現知覚神経は胃機能を調節しているため、それら神経異常は胃機能障害を誘起することが示唆された。また、FD病態モデル動物の作製においてAITCが有用であることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度「ヒト症状に類似した機能性ディスペプシア (FD) 病態モデル動物をワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) にて作製する」ことを到達目標として取り組んだが、下記の観点で目標達成が十分ではなかったと自己点検で評価している。 AITC処置動物がFD病態モデル動物となり得るための症状・行動変化の検証 ① 胃排出能の変化② 悪心・嘔吐の指標となるパイカ行動③ 胃拡張刺激による内臓痛に伴う異常行動 FD病態モデル動物を作製する上でAITCは、FDの病態成因を誘起するため有用であることを「研究実績の概要」にて上述した。しかし、AITC処置動物がヒトFD症状を現すかは、①胃排出能の解析以外では十分進んでない。その理由として、②悪心・嘔吐の指標パイカ行動、および、③胃拡張刺激による内臓痛に伴う異常行動を解析評価する実験条件を確立する必要があったためである。そのため、平成25年度は FD病態モデルに求められる症状・行動変化として上げられる3つの現象のうち、特に、②悪心・嘔吐の指標となるパイカ行動、および、③胃拡張刺激による内臓痛に伴う異常行動の両実験系の確立・評価に力点をおき検討したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題「機能性ディスペプシア (FD) 治療薬の開発を目指した新規病態モデル動物の開発と薬効評価」における昨年度の取組成果および問題点を踏まえ、以下の項目について本年度研究活動を遂行する。 作業仮説「アリルイソチオシアネート (AITC) 処理動物がFD病態モデル動物となり得る」に対してFD病態モデル動物を評価するための実験系の構築:① 胃排出能の低下、② 悪心・嘔吐の指標パイカ行動、③ 胃拡張刺激による内臓痛による評価、④ 既にFD治療薬として認められている薬物で上記①~③の症状・行動が回復するか。⑤ 新たなFD治療薬として期待されるTRPV1/TRPA1関連薬物を上記①~③にて評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究課題「機能性ディスペプシア (FD) 治療薬の開発を目指した新規病態モデル動物の開発と薬効評価」を遂行するため、以下の活動費用が必要であると考えている。 (1) 物品費:実験動物は日々の研究活動で必須である。また、TRPV1およびTRPA1関連試薬や抗体は高額である。そのため、消耗品は研究経費全体の約2/3を充てる予定である。 (2) 旅費:国内学会2回(薬学・薬理系)と国際学会1回(米国消化器病学会)の発表を予定している。 (3) 人件費:論文の英文校正および実験補助者などへの支払いを考えている。 (4) その他:学会誌投稿料、および、論文受理後の掲載料などを想定している。
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