研究課題/領域番号 |
24790536
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
田嶋 公人 城西国際大学, 薬学部, 准教授 (60406783)
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キーワード | アリルイソチオシアネート / カプサイシン / 機能性ディスペプシア (FD) / 胃粘膜微小炎症 / 実験動物 / ワサビ受容体TRPA1 / バニロイド受容体TRPV1 / 国際情報交換 |
研究概要 |
当該研究は、ストレス性胃腸機能障害である”機能性ディスペプシア (FD)”の治療薬開発を支える病態モデル動物の開発とそのモデル動物を用い既存薬の新たな薬効価値を見出すことを最終目標としている。平成25年度は平成24年度の反省を生かし「ヒトFD症状に類似したモデル動物をワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) にて作製する」ことを到達目標として取り組んだ。(1) AITCのラット胃粘膜適用は、微小炎症の指標である粘膜血管透過性の亢進を引き起こしたが、肉眼的な重篤な胃粘膜損傷を誘起しないことを見出した (Ulcer Research 40; 13-16, 2013)。(2) FDの病態成因として、バニロイド受容体TRPV1とワサビ受容体TRPA1発現知覚神経の異常興奮が胃腸機能障害を誘起すると推察されている。そこで、正常動物でのTRPV1とTRPA1による胃腸機能調節を解析した。その結果、1) TRPV1活性化薬カプサイシンは胃粘膜血流の増大を誘起し、その作用はTRPV1発現神経に含まれる神経型一酸化窒素合成酵素由来のNOが関与することを明らかにした(Pharmacology 92: 60-70, 2013)。2) カプサイシンはTRPV1を介して胃運動を亢進することを明らかにした (Gastroenterology 144 Suppl 1: S-194, 2013)。3) アリルイソチオシアネートはTRPA1発現神経の興奮を介して摘出下部消化管平滑筋の収縮を誘起させることを見出した (Gastroenterology 144 Suppl 1: S-370, 2013)、そして、4) アリルイソチオシアネートは覚醒下マウスの胃運動を減弱させることを見出した(第41回日本潰瘍学会 口頭発表)。 以上より、AITCは胃粘膜微小炎症を引き起こすこと、また、TRPV1/TRPA1発現知覚神経は胃腸機能を調節し、それら神経異常は胃腸運動異常など機能障害を誘起することが示唆された。これらの結果は、ヒトFDにおいても胃運動異常が病態要因の1つと考えられているため、FD病態モデル動物の作製におけて手がかりを掴むことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、平成24年度の自己評価の到達区分でやや遅れていると判断したことを反省し、「ヒト機能性ディスペプシア(FD)症状に類似したモデル動物をワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) にて作製する」ことを到達目標として取り組んだ。その結果、AITCは肉眼的な胃粘膜傷害を引き起こさずに覚醒下マウスにおいて胃運動を減弱させることを見出した。ヒトFDの病態要因の1つとして胃の器質的変化はなく、胃運動の低下が生じていることが知られている。この臨床知見を反映するモデル動物の作製に成功した点は進歩であった。しかし、胃運動低下だけではFD病態モデル動物を確立できたわけではない。以下、FD病態モデル動物確立のためさらに解析が必要であると考えている。 AITC処置動物がFD病態モデル動物となり得るための症状・行動変化の検証 (1) 悪心・嘔吐の指標となるパイカ行動 (2) 胃適応弛緩反応
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題「機能性ディスペプシア (FD) 治療薬の開発を目指した新規病態モデル動物の開発と薬効評価」における平成25年度の取組成果および問題点を踏まえ、以下の項目について平成26年度研究活動を遂行する。 観点1. FD病態モデル動物を評価するための実験系の構築 1) 悪心・嘔吐の指標パイカ行動、2) 胃適応弛緩反応 観点2. アリルイソチオシアネート (AITC) 処理動物がFD病態モデル動物となり得るか 1) FD治療薬アコチアミドを用いた胃運動、パイカ行動、そして、胃適応弛緩反応の症状・行動が回復するか。2) 新たなFD治療薬として期待されるTRPV1/TRPA1関連薬物を胃運動、パイカ行動、そして、胃適応弛緩反応にて評価
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次年度の研究費の使用計画 |
研究課題の遂行のため当初設備費としてPowerLab およびウエスタン・ブロットシステム一式の購入を考えていた。しかし、解析手段を一部変更し薬理学的手法でもう少し進めることを決めたため、物品費の余剰分が生まれ次年度も本研究課題に対して使用できる環境が整った。 研究課題「機能性ディスペプシア (FD) 治療薬の開発を目指した新規病態モデル動物の開発と薬効評価」を継続して遂行するため、以下の項目で使用することを考えている。 (1) 物品費:ラットやマウスなどの実験動物は日々の研究活動で必須である。また、TRPV1とTRPA1関連試薬は高額であるため、消耗品は研究経費全体の約2/3を充てる。(2) 旅費:薬理系の国内学会1回、消化器系の国内学会1回の発表を予定している。(3) 人件費・その他:論文の英文校正および実験補助者などへの支払いを考えている。(4) その他:学会誌投稿料、および、論文受理後の掲載料などを想定している。
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