研究実績の概要 |
当該研究は、ストレス性胃腸機能障害である”機能性ディスペプシア (FD)”の治療薬開発を支える病態モデル動物の開発とそのモデル動物を用い既存薬の新たな薬効価値を見出すことを最終目標としている。平成26年度はこれまでの成果が実り、「ヒトFD様症状に類似した病態モデル動物」を作製する上で病態要因の1つと考えられる胃運動減弱状態をワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) にて作製するに成功した。さらに、それは薬効評価可能であることが示された。以下、最終年度の研究成果を中心に記す。 (1) AITCによる胃運動減弱モデルマウス 我々は、覚醒下マウスへのAITC経口投与いより胃運動減弱状態を引き起こすが、胃粘膜傷害を惹起しないことを観察した。さらに、AITC誘起胃運動減弱は、既存の胃腸運動改善薬であるイトプリド、モサプリド、ネオスチグミン、そして、FD治療薬アコチアミドで改善することを見出した。それ故、AITC誘起胃運動減弱モデルマウスは胃運動改善薬を評価できる動物モデルであるとともに、FD様症状を反映した病態モデル動物として開発可能であることが示唆された(田嶋ら. 2014.第8回機能性ディスペプシア研究会)。 (2) FD様症状の病態成因の解析 我々はラット胃粘膜初代培養細胞を用い、AITCはタイトジャンクションバリアを崩壊すること明らかにした (Tashima et al. 2014, doi: org/10.5772/58603)。さらに、ラット胃粘膜ev-vivoチェンバーを用いAITCは炎症初期に生じる粘膜血管透過性の亢進を誘起するが、肉眼的胃粘膜損傷を生じないことを見出した (渡邉ら. 2015.3, 日本薬学会第135年会)。
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