研究課題
うつ病に対する治療薬として、セロトニン選択的再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)が汎用され、成果を上げているが、SSRI/SNRIの効果・副作用発現には著しい個人差が存在することが問題となっている。本研究は、抗うつ薬反応性に関連すると考えられる遺伝子のDNAメチル化状態をマーカーとした、抗うつ薬個別化適正医療の確立を目的とする。本年度は、1) これまでに研究協力者(関西医科大学 精神神経科 奥川学、加藤正樹)の協力の下で得られた、パロキセチン服用うつ病患者100名、フルボキサミン服用うつ病患者50名、ミルナシプラン服用うつ病患者50名の臨床情報から、各薬剤について、薬物反応性が高い患者(ベストレスポンダー:BR群)5名、反応性が低い患者(ワーストレスポンダー:WR群)5名を選定した。2) 選定した患者のゲノムDNAに対してバイサルファイト処理を行った。3) 次の4遺伝子についてDNAメチル化領域(CpGアイランド)を選定し、各患者のDNAメチル化比率を解析した。選定した遺伝子、DNAメチル化領域数、解析CpG数は以下の通り。脳由来神経栄養因子(BDNF);4領域 73CpG、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);1領域 16CpG、セロトニントランスポーター(5-HTT);2領域 53CpG、セロトニン1A受容体(5-HT1A);1領域 8CpG。4) 各薬剤のBR群とWR群とのDNAメチル化比率を比較し、有意な差が認められるCpG領域を特定した。各薬剤で特定された遺伝子とCpG領域数は以下の通り。フルボキサミン:BDNF 6CpG、5-HT1A 1CpG。ミルナシプラン:5-HTT 9CpG。パロキセチン:BDNF 3CpG、5-HTT 2CpG、GDNF 1CpG。
2: おおむね順調に進展している
計画当初は20遺伝子を候補に挙げており、そのうちの4遺伝子について抗うつ薬反応性と関連のあるDNAメチル化部位を絞り込むことができた。取り上げた4遺伝子は、他の論文の報告などを鑑みて学術的に優先順位の高いものであると考えられる。他の遺伝子についても学術的に優先順位の高いものから取り組んで行く。
今回取り上げた4遺伝子については、抗うつ薬反応性と関連が見られた領域について全症例を対象にメチル化比率の解析を行う。他の遺伝子については、先の4遺伝子と同じ手順で抗うつ薬反応性に関連するCpG領域を絞り込んでいく。
全症例に対してバイサルファイト処理するための試薬、メチル化比率を測定するための試薬に使用する。また、一部の作業を委託する必要が生じた場合の委託費を計上する。
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