研究課題
本研究の目的は、分泌膜小胞であるエキソソームの膜上に腫瘍関連抗原特異的なヒト抗体分子を提示させた抗体エキソソーム(AbEx)を薬剤送達の担体として用いた新規な癌治療法の開発である。平成24年度では、まず腫瘍関連抗原である癌胎児性抗原(CEA)に対するヒト単鎖型抗体遺伝子をエキソソームのマーカータンパク質であるCD63の細胞外ループに挿入したキメラ遺伝子のクローニングを行い、AbEx発現用コンストラクトを作製した。作製したAbEx発現ベクターをHEK293FT細胞に導入し、培養上清中からAbExの単離を試みた結果、低収量ながらも抗体を提示したエクソソームが得られたことを確認した。単離したAbExを蛍光色素Dioによって染色し、これをCEA陽性ヒト胃癌細胞株MKN45の培地中に添加して検鏡した結果、AbExが細胞内に顆粒状に存在する像が観察され、その細胞内への取込みが確認された。AbExのCEA陽性細胞への結合はフローサイトメトリーによっても確認されたが、その結合量は十分とはいえず、CEA陰性細胞への非特異的な結合も相当量認められた。これは、エクソソームあたりの抗体提示量が少ないこと、あるいは抗体融合タンパク質の抗原親和性が低いことが一因であると考えられた。AbExの産生量自体も少ないことを鑑みて、平成25年度では、抗体提示に用いる融合タンパク質のデザインの大幅な見直しを行った。腫瘍標的化に用いる分子種として完全長抗体を用いることとし、これをエクソソーム上に提示させるために、抗CEA抗体遺伝子をIgD型へと改変させた発現コンストラクトを作製した。併せて、間接的な提示法の試みとして、単離エクソソームをアビジン修飾し、ビオチン化抗CEA抗体をこれに結合させたAbExの調製も行った。しかしながら、安定的な収量と提示量の高いAbExが得られる系の構築が難しく、今後さらなる検討を要する。
すべて 2013
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Anticancer Res.
巻: 33 ページ: 2823-2831
巻: 33 ページ: 2855-2860