研究課題
患者数が最多の肝疾患である脂肪肝の進行、特に炎症及び線維化についての確定診断には、侵襲性が高い肝生検で行なわざるを得ないのは現状である。患者数の急増に備え、非侵襲的な確定診断法の開発及び確立が強く望まれている。本研究は独自に開発したTranslocator protein (18kDa)(TSPO)の特異的なプローブを用い、PETイメージングにより代表的な肝疾患を早期、定量かつ非侵襲的な画像診断法の開発及び機序の解明を目指した。昨年度まで申請者は、脂肪肝の中核病理であるミトコンドリア障害を注目し、TSPOが脂肪肝疾患の進行を反映できるバイオマーカーになりえることを発見した。また、TSPOをターゲットとした [18F]FEDACイメージングが、マウスにおける進行性脂肪肝を高精度で検出し、脂肪肝に対する新たな診断ツールとして有望であることを報告した。最終年度であるH26年は申請者が、[18F]FEDACイメージングの臨床実用化を目指し、ヒト肝臓検体を用いて、脂肪肝に対するTSPO-[18F]FEDACイメージングの有用性評価を行った。脳死ドナーから摘出された移植不適合な肝臓検体の中から、研究利用に関する同意が得られた検体を米国NDRIより、HAB研究機構を通じドナー情報と検体を入手し、インビトロARGおよび免疫組織化学の手法を用い、肝臓におけるTSPOの発現量及び[18F]FEDACとの特異結合を調べた。その結果、健常人肝臓で、TSPOの発現量が非常に少なかった。また、正常肝臓に比べ脂肪肝及び肝硬変患者の肝臓における[18F]FEDACの特異結合はそれぞれ5-10倍及び15倍以上高かった。さらに、同領域におけるTSPOの発現量と[18F]FEDAC結合の上昇は、肝臓病理障害及び病理スコアの推移と相関した。以上の結果から、ヒト肝臓における[18F]FEDACの放射能集積画像は脂肪肝の病理障害を反映し、TSPO-[18F]FEDACイメージングがヒト進行性脂肪肝に対し非侵襲かつ有効な診断法になりえることが示唆された。
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