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2012 年度 実施状況報告書

依存性薬物感受性・依存症脆弱性個人差におけるCREB遺伝子多型の役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24790544
研究種目

若手研究(B)

研究機関公益財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

西澤 大輔  公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (80450584)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード薬物依存 / 薬剤感受性 / 薬物感受性・依存症脆弱性個人差の遺伝要因
研究概要

下顎形成術の施術対象者検体を用いたゲノムワイド関連解析研究(GWAS)において最有力候補となったCREB1遺伝子を含む連鎖不平衡ブロック内のrs2952768多型に関して、主としてオピオイド鎮痛薬を投与された開腹手術症例においても関連解析を行ったところ、この多型のCアレルのホモの保有者では、術後24時間の鎮痛薬必要量が有意に多く、GWASの結果が再現された。
さらに、物質依存症患者を対象として、rs2952768多型が報酬・依存作用に影響を及ぼす可能性を調べた。その結果、この多型のCアレルの保有者では、覚醒剤依存症患者において多剤乱用者が少なく、アルコール依存症患者において薬物乱用者が少なく、また摂食障害患者においては、薬物依存症を合併している患者が少なく、かつアルコール依存症を合併している患者が少ない傾向であるなど、この多型が物質依存重症度を示す指標と関連することが分かった。
一方、オピオイド感受性と関連することが示唆されたこの多型が健常者におけるパーソナリティに影響を及ぼす可能性を調べるために、TCI(Temperament and Character Inventory)のパーソナリティ質問紙における7次元のパーソナリティのスコアとの関連を別の健常者の集団において調べたところ、報酬依存(Reward Dependence)の次元のみに関してこの多型との有意な関連が認められた。
なお、ゲノム上においてrs2952768多型の近傍にはMETTL21A(FAM119A)及びCREB1の遺伝子が存在するが、死後脳を用いた研究において、これらの遺伝子のうち、この多型のCアレルのホモの保有者では、CREB1のmRNA発現量が有意に多いことがわかった。以上から、今回同定した遺伝子領域の多型は、これまでの報告の中で、オピオイド感受性個人差に寄与する最も有望な多型であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度までの研究において、CREB1以外の主要なCREBサブタイプ遺伝子に関する関連解析は充分に進展していないが、CREB1近傍の2q33.3-2q34領域におけるrs2952768多型においては、各種依存症患者及び健常者を対象とした解析に関してはかなりの進展を遂げ、さらに次年度に予定していた発現量の解析及び応用的臨床研究までも行うことが出来たため。

今後の研究の推進方策

今回オピオイド感受性個人差に寄与する最有望多型であると考えられたCREB1遺伝子領域を含む2q33.3-2q34の遺伝子領域の多型に関して、ニコチン依存等の他の依存症の指標との間での関連解析を行い、別の物質依存症に関しても普遍的な関連を示す可能性を調べる。
一方、CREB1以外に、CREB3、CREB5、ATF2(CREB2)等の主要なCREBサブタイプ遺伝子に関しても、データベース・論文等の参照及び網羅的遺伝子多型解析チップのデータ等を利用した連鎖不平衡解析等により遺伝子多型の絞り込みを行い、ジェノタイピングデータ及びオピオイド鎮痛薬感受性の指標となる臨床データを用いて関連解析(個別多型・ハプロタイプ等)を行うことにより、オピオイド感受性に関連する他の有力な候補多型の包括的な同定を目指す。
その他、関連する共同研究先などと連携し、今回同定した2q33.3-2q34の遺伝子領域に存在するMETTL21A(FAM119A)及びCREB1の遺伝子等を対象として、それらの遺伝子がオピオイド感受性に影響するメカニズムの解明のための機能解析を行う。
さらに、現在共同研究先の東京歯科大学水道橋病院において下顎形成術を受ける患者を対象として、rs2952768多型及びこれまで同定された鎮痛薬感受性関連多型(Nishizawa et al., PLoS One, 2009)などを予測変数として、患者個々人に合った鎮痛薬投与量を予測するテーラーメイド疼痛治療を実施しているが(特許庁, 特願2011-288940)、その前向き研究において、今回同定したrs2952768多型が実際に術後24時間鎮痛薬必要量と有意に関連するかどうかを調べ、また他の多型を含めた予測式の妥当性を検証する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額(B-A)は当該年度所要額合計に比べてごくわずかの金額であり、ほぼ計画通りの執行であったので、次年度もほぼ計画通りに使用予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件) (うち外国 2件)

  • [雑誌論文] Genome-wide association study identifies a potent locus associated with human opioid sensitivity2013

    • 著者名/発表者名
      Nishizawa D, Fukuda K, Kasai S, Hasegawa J, Aoki Y, Nishi A, Saita N, Koukita Y, Nagashima M, Katoh R, Satoh Y, Tagami M, Higuchi S, Ujike H, Ozaki N, Inada T, Iwata N, Sora I, Iyo M, et al.
    • 雑誌名

      Mol Psychiatry

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1038/mp.2012.164

    • 査読あり
  • [学会発表] テーラーメイド疼痛治療を開始して

    • 著者名/発表者名
      福田謙一, 青木謙典, 西澤大輔, 高北義彦, 齋田菜緒子, 林田眞和, 一戸達也, 池田和隆
    • 学会等名
      第33回日本臨床薬理学会学術総会
    • 発表場所
      宜野湾
  • [学会発表] 様々な依存性物質の感受性に共通して関連する遺伝子多型

    • 著者名/発表者名
      西澤大輔, 池田和隆
    • 学会等名
      第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会
    • 発表場所
      宇都宮
    • 招待講演
  • [備考] 鎮痛にも依存にも影響するヒト遺伝子配列の差異を発見 ~網羅的ゲノム解析の成果~

    • URL

      http://www.igakuken.or.jp/research/topics/2012/1128.html

  • [備考] Discovery of "Pain Gene"...

    • URL

      http://alert.psychiatricnews.org/2012/12/discovery-of-pain-gene-paves-way-to.html

  • [産業財産権] 各種鎮痛関連遺伝子解析による薬物感受性の評価方法2012

    • 発明者名
      池田和隆, 西澤大輔. 福田謙一
    • 権利者名
      公益財団法人東京都医学総合研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT12-0053
    • 出願年月日
      2012-12-21
    • 外国
  • [産業財産権] サイクリックAMP応答配列結合タンパク質遺伝子解析による薬物感受性および疾患脆弱性の評価方法2012

    • 発明者名
      池田和隆, 西澤大輔. 福田謙一
    • 権利者名
      公益財団法人東京都医学総合研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT12-0037
    • 出願年月日
      2012-10-01
    • 外国

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公開日: 2014-07-24  

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