研究実績の概要 |
CREB1遺伝子以外の主要なCREBサブタイプ遺伝子であるATF2(CREB2)の5'フランキング領域の多型が前年度までに術前のオピオイド鎮痛薬の効果と多重検定補正後も有意な関連を示していたが、この多型に関して、主としてオピオイド鎮痛薬を投与された開腹手術症例におけるオピオイド感受性の指標、覚醒剤依存、アルコール依存、摂食障害、ニコチン依存等の物質依存症脆弱性の指標、等との間での関連解析を行ったが、いずれもP<0.05となるような有意な関連は認められなかった。 その他、現在共同研究先の東京歯科大学水道橋病院において下顎形成術を受ける患者を対象として、rs2952768多型及びこれまで同定された鎮痛薬感受性関連多型(Nishizawa et al., PLoS One, 2009)などを予測変数として、患者個々人に合った鎮痛薬投与量を予 測するテーラーメイド疼痛治療を実施しているが(特許庁, 特願2011-288940)、その前向き研究において、今回同定したrs2952768多型等が実際に術後24時間鎮痛薬必要量または術前のオピオイド鎮痛薬の効果と有意に関連するかどうかを調べたところ、いずれもこれらの指標との間には有意(P<0.05)な関連は認められなかった。このことから、鎮痛薬の1回投与量を個別化したことにより単位量当たりの鎮痛薬の効果が等量投与の場合とは異なって表出され、等量投与において認められた関連がそのままの形で検出されなかった可能性も考えられた。ただ、他の多型を含めた予測式の妥当性を検証したところ、rs2952768等の多型は開腹術における術後及び周術期鎮痛薬必要量の有意な予測因子であることが分かった(Yoshida and Nishizawa et al., PLoS One, 2015)。
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