研究課題
精神科外来に通院するアルコール依存症をもつ外来患者67名を対象に、GIRK阻害能のあるセロクラール1日3錠(20mg×3=60mg)を前期3ヶ月投与→後期3カ月対照薬シナール(200mg×3=600mg)を用いる)投与(前期投与群)、前期3カ月対照薬投与→後期3カ月投与(後期投与群)する2つのグループを作り、飲酒行動/再飲酒リスク等を評定し比較を行った。6か月間の有効データが得られた35名を対象に解析を行い、飲酒行動の重症度においては有意な結果が認められなかったものの、再飲酒リスクの下位因子である刺激脆弱性についてセロクラールの有意な効果が認められたため、その結果を2013年10月の国際神経精神薬理学会の会議にて発表した。その後、データをより厳しいコンプライアンスの基準をもって精査した。さらに、本研究のデータはドロップアウト率が非常に高いため、6ヵ月間の研究が遂行できた対象者と途中でドロップアウトした対象者の間に質的に差が生じてしまう恐れが考えられた。これらを踏まえて、前半3か月のデータ(N = 50)のみを用いて再解析を行った。その結果、有意傾向ではあったものの、飲酒行動の重症度においてセロクラールの効果が認められた。この結果はクロスオーバーではないものの、アルコール依存症患者としてより普遍性の高いデータセットを元に、もっとも重要な変数と言える飲酒行動において一定の結果が認められたことから非常に重要なものと考えられたため、英文論文執筆を進めた。したがって、2014年度はこの解析結果を国際学会にて発表し、英文論文として投稿する。なお、本研究の背景となる依存症におけるGIRKチャネルの役割に関する総説論文も国際誌に投稿し、採択された。
1: 当初の計画以上に進展している
中間報告を含め、国際学会で発表を行っている。さらに、新たな結果についても2014年11月に開催される国際嗜癖医学会にて発表するため、4月末に抄録を提出した。また、英文論文も執筆が完了し、2014年4月末に投稿(Translational Psychiatry)をし、現在査読結果を待っている状況である。
2014年度は、4月末に投稿した論文が採択されるよう、修正作業などに努める。また、国際嗜癖医学会に抄録を提出しているため、採択された折には発表を行う。また本研究の結果を踏まえた総説論文の執筆も進める。一方で、ストレスによって賦活する視床下部-下垂体-副腎系のホルモンによってドーパミンレベルが影響を受けて依存物質再使用を増幅させるメカニズムが最近になって指摘されはじめていることから、内分泌指標を用いた本研究の発展についても考察していきたい。
国際学会について予定よりも航空券が安く取れたため費用がかからなかった。また、国内学会についても比較的所属機関から近い地域で開催されたため、交通費もかからなかった。本研究の新たな解析結果を国際学会・国内学会等で発表する費用(40万円程度)、現在投稿中の論文の修正稿の英文校正費(5万円程度)、本研究結果を含めた総説論文の英文校正費(10万円程度)、本研究計画を発展させるための情報収集(学会参加等)や予備実験(アルコール使用度とストレスホルモンの関連等を調べる)にかかる費用(15万円程度)にあてる。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
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