研究課題/領域番号 |
24790547
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小林 良樹 秋田大学, 医学部, 講師 (10375298)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / ステロイド抵抗性 |
研究概要 |
本年度は、気道上皮細胞(cell line)およびヒト末梢血好酸球における検討から始めた。 気道上皮細胞におけるステロイド受容体(GR)の核内移行能の測定は、以前に単球・マクロファージ系細胞で行っていたWestern-blotting法にて再現し、至適化することができた。ステロイド抵抗性が誘導される酸化ストレス下にて、GR核内移行能が低下することも確認できた。GRのリン酸化(GR-Ser226)の検出方法をフローサイトメトリーを用いた方法で確立し、同様の条件下にてGR-Ser226のリン酸化が更新することも確認できた。さらに。ホスファターゼPP2Aの発現(Western-blotting法、フローサイトメトリー)および活性(免疫沈降タンパクを用いた活性測定法)の測定条件も気道上皮細胞で至適化し、ステロイド抵抗性が誘導される条件下ではPP2A活性が低下することがわかった(PP2A発現レベルは変化しなかった)。 好酸球においては、ヒト末梢血から採取可能な総数に限りがあるためWestern-blotting法を用いたGR核内移行能の検討は困難であった。GR-Ser226リン酸化の検出方法に関しては、気道上皮細胞と同様にフローサイトメトリーを用いた方法で確立することができた。また、PP2Aの発現はWestern-blotting法で確認したが、活性についてはサンプル量の問題で困難であった。主に分離好酸球(CD16 negative selection法)を用いて検討してきたが、全血法でのGR-Ser226リン酸化の検出方法も並行して行ってきた。なお、ステロイド抵抗性との関連性はまだ確認できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
重症喘息の病態において一役を担っている好中球における検討がまだできていないが、気道上皮細胞と好酸球に関しては順調に解析できている。ただし、病態モデルにおける検討が気道上皮細胞でしかできていない。好中球および好酸球に関してはヒト末梢血サンプルを用いるためにサンプリングの頻度や回収量に応じて実験の進行に影響が生じている。さらに、好中球や好酸球はかなりデリケートな細胞であり、再現性を保った測定方法の確立に時間を要している。また、同様にサンプルの問題でPP2Aの過剰発現およびノックダウンモデルの検討もまだできていないが、まずは気道上皮細胞から解析を進めていく準備は整っている。 臨床サンプルに対する応用として、全血法を用いたGR-Ser226リン酸化の測定方法を好酸球において至適化できていることが、今後の進行速度の加速に繋がると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
好酸球および好中球のステロイド感受性への関与を病態モデル(IL-2, IL-4共培養や酸化ストレス下で誘導されるステロイド抵抗性モデル)においても検討していく。サンプルの問題で困難であることが予想されるが、フローサイトメトリーや免疫染色など少量のサンプルでも検出可能なmethodを駆使して解析を進めていく。可能であれば、気管支鏡検査で得られる気管支肺胞洗浄液や気道粘膜の解析も検討したい。なお、現在、臨床サンプル(気管支喘息を含む気道炎症性疾患)に関するプロトコールを倫理委員会に提出中であり、承認され次第、多くの疾患サンプルの入手が可能となる。 ステロイド感受性とホスファターゼの関与(特にGR-Ser226リン酸化)については、PP2A以外の候補をRNA干渉を用いて探索していく。ターゲットホスファターゼを含む複合体の構成やその機能に対しても可能な限り検討する。ホスファターゼ活性を制御する物質を探り、各疾患におけるステロイド抵抗性改善の治療ターゲットになりうるかということにも触れてみたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度で目的の実験系に使用可能な抗体(Western-blotting法やフローサイトメトリー用)をおおよそ選定することができた。臨床サンプルを解析していく上でこれらの抗体を追加購入していく予定である。ただし、予定していた計画より進行状況がやや遅れていることもあり、研究費の一部が次年度に持ち越しとなっているので、以下のものに関しても計画している。 ①フローサイトメトリーを用いてセルソーティングするための抗体、②RNA干渉による候補ホスファターゼのスクリーニングのために必要なsiRNAやその関連試薬、③ステロイド感受性テストに使用するELISA関連試薬(ステロイド感受性の指標としてELISAによるステロイドの炎症性サイトカイン抑制テストがすでに確立している。)、④研究成果の発表を目的国内外への学会参加費用(旅費や参加費など)、⑤論文作成に必要な資料収集や英文添削サービス利用料などの雑費
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