最終年度は、日常臨床で活用できるような簡易でかつ再現性のあるステロイド抵抗性を反映する指標となる検査法について検討した。対象サンプルとしては、主に重症喘息患者と健常者からの末梢血および気道上皮細胞(質と量を兼ね備えた鼻粘膜擦過細胞)を用いた。レーザー顕微鏡とフローサイトメーター(FCM)の2つの機能が備わっImaging FCMを用いて比較的簡易にGR-Ser226リン酸化レベルやPP2A発現レベルを確認することが出来るようになった。核内移行についてもImaging FCMで解析可能であるが、現時点では至適条件が定まっていない状況である。現在、各細胞ごとの発現レベルと実際のステロイド抵抗性との相関性を検討中である。 PP2Aの他に、ステロイド抵抗性においてキーファクターとなりうるホスファターの関与についても検討した。JNK-GR-Ser226リン酸化経路に関与するホスファターゼから膜型tyrosine phosphataseの一つであるPTPRRそしてdual specificity phosphataseの一つであるDUSP4に注目し、重症喘息患者からの末梢血単核球におけるそれらの蛋白発現レベルを調べた。重症喘息患者では、健常者よりそれらの発現レベルが明らかに低下していて、特に興味深いことに、PP2Aの活性をPTPRRが制御する可能性が示唆された。なお、siRNAを用いた検討では、PTPRR、DUSPの発現低下により、GR-Ser226のリン酸化促進、ステロイド受容体の核内移行能の低下、そしてステロイド抵抗性誘導がみられている。また、Imaging FCMを用いて末梢血中の血球系細胞、気道上皮細胞におけるPTPRR、DUSPの発現レベルも検討した。 喘息治療薬である長時間作動型気管支拡張剤(LABA)や新規マクロライドがPP2Aを活性化することがわかってきた。PTPRRやDUSP4もLABAによって活性化される可能性が示唆されている。引き続き、新規マクロライドの効果も含めたホスファターゼ活性化によるステロイド抵抗性改善についての研究を検討している。
|