研究課題
「インフォマティクスを活用した血中タンパク質・ペプチドリストよりの疾患マーカー探索」を目標にターゲット疾患の選定・検体収集と、目標を達成するための基盤技術の構築を引き続き行っている。基盤技術に関しては血中ApolipoproteinE(ApoE)をターゲットに、遺伝子の情報なしに質量分析計を用いたプロテオミクス技術によりほぼ全長を数ulの微量血清よりアミノ酸レベルで質量分析計を用いることにより再シーケンスできること、これを応用することにより、アルツハイマー型認知症(AD)の最大のリスク要因であるApoE4アイソフォーム含めApoEのタイピング(各アイソフォームのホモ/ヘテロ検出)・半定量を行うことを確立し英文査読誌に公表した(PLoS ONE 9(1): e85356. doi:10.1371/journal.pone.0085356)。ADの例のように検査対象たんぱく質のタイピングが臨床的意義を持つ例はしばしばあり、このような応用の可能性を示したものである。このApoEのタイピング報告には、公表後すぐに世界的な質量分析計メーカーの運営する先端研究紹介サイトに紹介されるなど(http://acceleratingscience.com/proteomics/assessing-risk-for-alzheimers-and-dyslipidemia-with-apoe-serotyping/; 申請者と利益相反の関係はない)多少の反響があった。未発表データも含めると抗体と質量分析を組み合わせることにより、任意に近い血中タンパク・ペプチドの検出同定・半定量が可能になったと考える。
2: おおむね順調に進展している
ターゲット疾患の選定・検体収集としては、ApoEの例では疾患としてはAD・高脂血症その他のApoE異常症となる。これらは、いわゆる生活習慣病とかなり重複しており、ターゲット検体として一般的なボランティア検体を用いて、ApoEに関する研究は行った。本課題では新規疾患マーカー探索を念頭に置いているため、さらにターゲット疾患・検体を広げていきたい。
当初は疾患マーカーの量的な測定のみを念頭に置いていたがApoE研究を通じ、その質(どのようなタイプのマーカーが存在するか)についても注目度が高いことを感じるようになった。質量分析による精密質量測定は、定量だけではなくそのような定性的な検出にも強みがあり、そのような方向からも臨床的に有用な疾患マーカーの掘り起こしを図りたい。申請者は日本人類遺伝学会等の認定する臨床遺伝専門医でもあり、タンパク質のタイプ別の原因となるgenotypeのvarietyについてはむしろ専門であり、量・質の面から推進をしていくように考えている。
4,447円の次年度使用額が生じているが、これは試薬がわずかに安価で納入されたためである。次年度で消尽する。具体的には、試薬等に充てる。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)
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