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2012 年度 実施状況報告書

トリプトファン代謝をターゲットとしたうつ病発症の新規予測診断法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 24790552
研究機関京都大学

研究代表者

村上 由希  京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50580106)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード抑うつ / トリプトファン代謝 / IDO1
研究概要

うつ病発症の原因には遺伝的素因に加え、ストレスなどの浸襲による慢性炎症が関わっている。炎症を持続させ、慢性化させるメカニズムの一つに炎症性サイトカインにより誘導されるindoleamine 2,3-dioxygenase 1 (IDO1) の関与が示唆されている。IDO1はL-トリプトファン(TRP)代謝経路の律速酵素であり、その代謝産物は様々な組織・細胞でアポトーシスをはじめ、フリーラジカルの産生など多様な炎症反応に関わっている。神経系ではIDO1酵素誘導によるセロトニン(5-HT)レベルの低下がうつ病を含む精神疾患の発症に関与していることが示唆されている。本研究は、慢性炎症によるうつ病発症の原因を解明し、うつ病の新たな診断・治療法を開発することを主たる目的として行った。本年度の研究実績を下記に示す。
1)慢性炎症によるうつ病様病態の進展とTRP代謝の関与に関する検討。IFN持続投与やIFN持続発現により、脳内でのIDO1酵素が誘導されることを確認したモデル動物において、まずはうつ病様行動の測定を行った。うつ病様行動の測定には、抗うつ薬のスクリーニングに汎用で用いられるForced swim test (FST)を用いた。同時に基本的な行動量や記憶障害には差がないことをOpen filed testやY-maze, Object recognition testなどで確認した。薬理学的行動解析後、脳内のTRP代謝酵素活性、TRP代謝産物ならびに5-HTの測定をHPLCにて行った。
2)TRP代謝酵素遺伝子欠損動物を用いて、TRP代謝阻害のうつ病発症への影響を検討。1)と同様に、慢性炎症モデル動物を用いて、TRP代謝の律速酵素であるIDO1遺伝子欠損動物を用いて、うつ病発症への影響を調べた。うつ病様行動の測定には、1)と同様にFSTを用いた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書に記載した研究計画はおおむね達成できた。TRP代謝の律速酵素であるIDO1遺伝子欠損マウスにおける病態解析も終了し、慢性炎症におけるTRP代謝の関連が明らかになりつつある。今後、IDO1遺伝子欠損動物だけでなく、そのほかのTRP代謝酵素遺伝子欠損マウスを用いた解析が必須であると考える。また、適当な阻害剤を用いた解析、あるいは陽性コントロールとして、すでに臨床で用いられている抗うつ薬の投与により病態が改善するか、検討する。
最終的に、臨床検体を用いた実際の臨床応用への検討が必要であると考える。

今後の研究の推進方策

前年度までに、実験動物を用いた基礎的検討は終了している。そのため、今後は、臨床応用を目指し、発症前診断法の確立を目指す。
1)臨床検体を用いて、サイトカイン治療の副作用として発症するうつ病の発症前診断法の確立。全血培養を用いた薬剤刺激に対するIDO活性誘導の反応性の検討する。全血培養系を用いて、治療に用いる薬剤(サイトカイン製剤など)の刺激に対して、IDO活性誘導の反応性を検討する。臨床共同機関と連携して、IFN-gammaをはじめとするサイトカイン治療を受ける予定の患者のうちで、さらに同意が得られた患者から採取した血液を全血培養し、薬剤刺激後、培養上清中のKYNおよびTRPをHPLCにて測定する。全血培養の条件については、LPS刺激による予備実験ですでに検討済みである。また健常人の検体を用いた予備検討で、薬剤に対する反応性の違いがみられることはすでに確認した。
2)患者血清中のTRPおよび代謝産物の動態とうつ病との関係。1) と同患者検体からサイトカイン治療開始後に血液を採取し、血清中のTRPおよび関連代謝産物の経時的な測定をHPLCにて行う。同時に治療の進行に合わせて、うつ病の評価尺度となるMADRS (Montgomery-Asberg Depression Rating Scale) やHAM-D (Hamilton Depression Scale) などの設問を用いた評価試験結果を得て、TRP代謝産物との相関性を検討する。臨床検体の結果から、うつ病の発症や進行とTRP代謝産物動態の関係を明らかにする。
最終的に、初年度、次年度の研究成果をまとめ、国際誌に発表する。

次年度の研究費の使用計画

本年度の研究費の使用は、主にマウスなど実験動物およびそれに関わる動物飼育飼料、血液培養に必要な試薬や各種酵素などの試薬、HPLCに関わる分離、濃縮カラムなどの消耗品、実験に必要なバイヤルなどガラス器具、その他の試薬類など主に消耗品に使用する予定である。
また、国際誌に投稿するにあたって、英文校正や投稿料なども必要である。さらに国内外の学会で発表するための旅費なども必要となる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Remarkable role of indoleamine 2,3-dioxygenase and tryptophan metabolites in infectious disease: potential role in macrophage-mediated inflammatory diseases.2013

    • 著者名/発表者名
      Murakami Y, Hoshi M, Imamura Y, Arioka Y, Yamamoto Y, Saito K
    • 雑誌名

      Mediators Inflamm.

      巻: 2013 ページ: 1-9

    • 査読あり
  • [学会発表] Species difference in Tryptophan metabolism.2012

    • 著者名/発表者名
      Murakami Y
    • 学会等名
      The 13th satellite symposium of the Japanese Society for Tryptophan Research
    • 発表場所
      Brisbane, Australia
    • 年月日
      20121104-20121109
  • [図書] Tumor necrosis factor-alpha related signal pathways and neuronal diseases.2013

    • 著者名/発表者名
      Murakami Y, Imamura Y, Mitani S, Hoshi M, Arioka Y, Yamamoto Y, Seiyama A, Saito K
    • 総ページ数
      28
    • 出版者
      Nova Science Publishers.

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公開日: 2014-07-24  

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