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2012 年度 実施状況報告書

脇役が語るアミロイドーシスの診断および治療~アミロイド共存蛋白質の世界~

研究課題

研究課題/領域番号 24790557
研究機関熊本大学

研究代表者

田崎 雅義  熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (50613402)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードアミロイドーシス / LC-MS/MS / アミロイド共存蛋白質
研究概要

アミロイドーシスは、現在、日本に約500 万人以上の患者がいる巨大な難治性の疾患群である。本疾患は、詳細なアミロイド形成機構が不明であることから、未だに根治的な治療法や早期診断法がない。本研究では、アミロイドーシスの根治治療法と早期診断法の確立を目標とし、アミロイド形成におけるclusterin の役割の解析、ならびに質量分析装置を用いた新規解析法を駆使し、新たなアミロイド線維に共存し線維形成に対して阻止的に働く蛋白質を網羅的に解析し、治療分子や早期診断マーカーの開発を行う。
計画初年度である平成24年度は、clusterin の新規早期診断マーカーとしての可能性を探索するために、FAP患者血清のclusterin 濃度を測定した。その結果、FAPでは、健常者に比べ、血清clusterin 濃度の有意な増加を認め、さらに、重症度ともに、減少する傾向も確認した。また、FAPキャリアでも血清clusterin 濃度が上昇している傾向が示された。
アミロイド沈着部位に存在する新規アミロイド共存蛋白質を探索するために、代表的な全身性アミロイドーシス(FAP 20例、SSA 5例、ALアミロイドーシス10例、AAアミロイドーシス、5例)の剖検、生検ホルマリン固定組織をLC-MS/ MSを用いて解析した。結果として、上記のclusterin以外にもアミロイド形成への関与が疑われる数種の新規アミロイド共存蛋白質を同定した。その中には、蛋白質の処理に関与するヒートショックプロテイン(HSP)やユビキチン関連蛋白質、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が含まれていた。これらclusterinやHSP, MMPはFAPの早期診断マーカー、更には治療薬の候補になり得る可能性をもつ。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

clusterin の新規早期診断マーカーとしての可能性の探索に関して、初年度は、FAPにおいて血清clusterin 濃度が健常者群に比べて、優位に増加しており、重症度とともに減少する傾向が確認された。さらに、FAPキャリアにおいても、血清clusterin 濃度は、増加傾向を認め、早期診断マーカーとしての可能性を示すことが出来た。また、clusterin のアミロイド線維形成への影響に関して、各種アミロイドーシスのアミロイド沈着部位の解析から、clusterin がFAPだけでなく、ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、SSA、角膜アミロイドーシスにおいてもアミロイドと共存していることが明らかとなり、各種アミロイド線維の形成への関与が疑われた。
アミロイド沈着部位に存在するアミロイド共存蛋白質の探索に関しては、各種アミロイドーシス患者のホルマリン固定組織を用いたLC-MS/MSによるプロテオーム解析から、アミロイド形成阻止に働く可能性のある各種蛋白質(HSP、ユビキチン関連蛋白質、MMPなど)を同定できた。また、FAPにおいて、アミロイドの沈着量と比例して有意に増加する診断マーカーとして期待できる細胞外分泌蛋白質も同定できた。以上のように、clusterin 以外にも治療薬および早期診断マーカーとしての候補蛋白質を同定することができたため順調と考えられる。次年度の研究に向けての準備が整った。

今後の研究の推進方策

次年度は、前年度の計画を継続して行うと同時に、更に研究を発展させ、clusterin および新規アミロイド共存蛋白質による治療法および早期診断マーカーの開発に向けて研究する。FAP以外のアミロイドーシスでもclusterin の新規早期診断マーカーとしての可能性を探索するために、AL、AA、SSAの患者の血清clusterin 濃度を測定し、健常者と比較する。さらに、血清clsuterin 濃度を迅速かつ汎用的に測定できるように、自動分析装置によるclsuterin の測定法を確立する。また、clusterin の治療薬としての可能性を探索するために、in vitroおよびin vivo の実験系でclusterin のアミロイド線維形成に与える影響を評価する。
前年度のLC-MS/MSによる組織解析の結果から、明らかとなった蛋白質のうちアミロイド線維形成に対して阻止的に働く可能性のある蛋白質および、早期診断マーカーとなる可能性のある蛋白質にフォーカスを当て更なる検討を実施する。治療薬の候補となる蛋白質に関しては、in vitroでのチオフラビンTなどを用い、アミロイド線維形成に与える影響を評価する。また、早期診断マーカーの候補蛋白質に関しては、アミロイドーシス患者と健常者血清における発現の違いをELISAにて定量的に比較検討する。

次年度の研究費の使用計画

FAP以外のアミロイドーシスにおいても、血清clusterin の早期診断マーカーとしての有用性を検証するために、ELISA kit を購入する。また、clusterin の自動分析装置による測定法を確立するために、抗clusterin抗体および二次抗体を購入する。また、in vivo において、clusterin のアミロイド線維形成に与える影響を評価するため、実験動物の購入費や飼育費に研究費を用いる。
前年度にアミロイド沈着組織からLC-MS/MSにより同定した蛋白質に関して、アミロイド線維形成への影響をin vitroで評価するために、リコンビナント蛋白質を購入する。また、アミロイド沈着に比例して増加していた細胞外分泌蛋白質に関して、新規早期診断マーカーとしての有用性を検証するために、候補蛋白質のELISA kit を購入する。
当初の計画どおり、以上に示した研究に次年度の研究費を用いる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Impact of antibodies against amyloidogenic transthyretin (ATTR) on phenotypes of patients with familial amyloidotic polyneuropathy (FAP) ATTR Valine30Methionine.2013

    • 著者名/発表者名
      Obayashi K, Tasaki M, Jono H, Ueda M, Shinriki S, Misumi Y, Yamashita T, Oshima T, Nakamura T, Ikemizu S, Anan I, Suhr O, Ando Y.
    • 雑誌名

      Clin Chim Acta

      巻: 419 ページ: 127-131

    • DOI

      10.1016/j.cca.2013.02.002.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel function of transthyretin in pancreatic alpha cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Su Y, Jono H, Misumi Y, Senokuchi T, Guo J, Ueda M, Shinriki S, Tasaki M, Shono M, Obayashi K, Yamagata K, Araki E, Ando Y.
    • 雑誌名

      FEBS Lett

      巻: 586 ページ: 4215-22

    • DOI

      10.1016/j.febslet.2012.10.025.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The occurrence of islet amyloid polypeptide amyloidosis in Japanese subjects.2012

    • 著者名/発表者名
      Su Y, Misumi Y, Ueda M, Shono M, Tasaki M, Guo J, Jono H, Obayashi K, Senokuchi T, Yamagata K, Ando Y.
    • 雑誌名

      Pancreas

      巻: 41 ページ: 971-3

    • DOI

      10.1097/MPA.0b013e318249926a.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Aged vervet monkeys developing transthyretin amyloidosis with the human disease-causing Ile122 allele: a valid pathological model of the human disease.2012

    • 著者名/発表者名
      Ueda M, Ageyama N, Nakamura S, Nakamura M, Chambers JK, Misumi Y, Mizuguchi M, Shinriki S, Kawahara S, Tasaki M, Jono H, Obayashi K, Sasaki E, Une Y, Ando Y.
    • 雑誌名

      Lab Invest

      巻: 92 ページ: 474-84

    • DOI

      10.1038/labinvest.2011.195.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Potential use of glucuronylglucosyl-β-cyclodextrin as a novel therapeutic tool for familial amyloidotic polyneuropathy.2012

    • 著者名/発表者名
      Jono H, Anno T, Motoyama K, Misumi Y, Tasaki M, Oshima T, Mori Y, Mizuguchi M, Ueda M, Shinriki S, Shono M, Obayashi K, Arima H, Ando Y.
    • 雑誌名

      Amyloid

      巻: 19 (Suppl 1) ページ: 50-2

    • DOI

      10.3109/13506129.2012.674988.

  • [雑誌論文] Antibody therapy for familial amyloidotic polyneuropathy.2012

    • 著者名/発表者名
      Su Y, Jono H, Torikai M, Hosoi A, Soejima K, Guo J, Tasaki M, Misumi Y, Ueda M, Shinriki S, Shono M, Obayashi K, Nakashima T, Sugawara K, Ando Y.
    • 雑誌名

      Amyloid

      巻: 19 (Suppl 1) ページ: 45-6

    • DOI

      10.3109/13506129.2012.674075. Epub 2012 Apr 17.

  • [学会発表] 喜雄:組織プロテオーム解析による新規アミロイドーシス診断法の開発2012

    • 著者名/発表者名
      田崎雅義、植田光晴、三上紗弥香、韓美英、大嶋俊範、板東泰彦、神力悟、宇宿弘輝、城野博史、大林光念、安東由喜雄
    • 学会等名
      第 59 回 日本臨床検査医学会学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      20121129-20121202
  • [学会発表] Typing of amyloidosis by proteome analysis2012

    • 著者名/発表者名
      Masayoshi Tasaki, Mitsuharu Ueda, Konen Obayashi, Hiroyuki Hata, Hirofumi Jono, Genki Suenaga, Su Yu, Satoru Shinriki, Taro Yamashita, Yukio Ando.
    • 学会等名
      2th Meeting of the Asian Society of Clinical Pathology and Laboratory Medicine
    • 発表場所
      Kyoto International Conference Center Room D Event Hall
    • 年月日
      20121129-20121201
  • [学会発表] LC-MS/ MS による骨髄腫に伴う軽鎖沈着症の診断および病態解析2012

    • 著者名/発表者名
      田崎雅義、畑裕之、實吉拓、中嶋淑心、田尻景子、安達政隆、冨田公夫、神力悟、城野博史、大林光念、安東由喜雄
    • 学会等名
      第52回日本臨床化学会年次学術集会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター
    • 年月日
      20120906-20120908
  • [学会発表] RNAi therapy using cholesterol-conjugated siRNA for TTR-related ocular amyloidosis.2012

    • 著者名/発表者名
      Masayoshi Tasaki, Hirofumi Jono, Mitsuharu Ueda, Ryuhei Hara, Konen Obayashi, Takahiro Kawaji, Dinah Sah, Yupeng Fan, Taro Yamashita, Yukio Ando
    • 学会等名
      13th International Symposium on Amyloidosis
    • 発表場所
      Groningen, The Netherlands
    • 年月日
      20120506-20120510

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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