研究1;位相差トラッキング法による弾性率の頸動脈プラークに対する有用性の実証(1)頸動脈プラークの弾性率の経時的変化の観察:短期の研究では弾性率の大きな変動はみられず、測定方法として信頼性の高い方法と考えられた。頸動脈プラークの弾性率分布図と病理組織との比較検討:治療技術の向上により頸動脈の高度狭窄に対する治療がこれまでの内膜剥離術から頸動脈ステント術が主体となり病理検体の採取が困難であった。対象は1例であり、これに対し病理組織との比較を行った。弾性率分布図の解像度を保つためにはフレームレートに制限があり、解像度と表示範囲のバランスが今後の課題となることが明らかとなった。 研究2;高血圧症における位相差トラッキング法による弾性率の有用性の実証:222名のデータが収集された。血管弾性率はIMTおよびプラークスコアと有意な正の相関がみられIMTの肥厚がみられるほど、またプラークが多いほど血管弾性が悪いという結果であった。他の血管特性であるPWVとは正の相関がみられ、血管の特性としては血管弾性が不良であると脈波速度が速いという結果であったが、血管内皮機能を示すFMDとの相関はみられななかった。また、血圧については中心血圧(AI)のうち収縮期圧および脈圧と血管弾性率の間に有意な相関がみられた。一方で、血圧の日内変動と頸動脈弾性率の間には有意な関連はみいだせなかった。生活習慣のうち、塩分摂取量が弾性率と有意な関連がみられたことから、塩分摂取量の増加から中心血圧上昇、血管弾性率の悪化が示唆された。心血管イベントについては短期の研究では関連性はみられなかった。今後は、血管弾性率が血管イベントに関連する臓器障害(腎臓、心臓、脳)に影響を与えるか検討したい。
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