研究課題/領域番号 |
24790563
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
有戸 光美 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (00509911)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 翻訳後修飾 / アセチル化 / 関節リウマチ |
研究概要 |
関節リウマチ診断のための臨床血液検査では、血清中の抗シトルリン化ペプチド抗体・リウマチ因子の検出などが採用されているが、十分とは言えない。従って、従来の検査項目を補完するような新規検査項目が必要とされている。申請者グループは、関節リウマチ患者の末梢血において特定の蛋白質のアセチル化が亢進していることを突き止めており、本研究では、この蛋白質のアセチル化の測定法の確立を含め、診断的意義を明らかにし、臨床検査として確立したい。 平成24年度の本研究では、まず、すでに検出している関節リウマチ患者末梢血リンパ球で、アセチル化が亢進している蛋白質を回収し、トリプシンで消化後、MALDI-TOF/TOF型質量分析器を用いて同定した。その結果、関節リウマチでアセチル化が亢進している蛋白質として、alpha-enolase (ENO1)とイソクエン酸デヒドロゲナーゼが同定された。 次に、同定アセチル化蛋白質の診断指標としての有用性を評価する目的で、同定アセチル化蛋白質の「アセチル化を受けているリジン残基とその周辺のアミノ酸配列」を認識する抗体を作製するために、関節リウマチ特異的に亢進している同定蛋白質のアセチル化部位(リジン残基)の特定を試みた。まず、LC-MSを用いて、健常者末梢血リンパ球で試みた結果、120番目と126番目のリジン残基がアセチル化されたペプチドと256番目のリジン残基がアセチル化されたペプチドが検出され、健常においてENO1は、120、126、256番目のリジン残基でアセチル化されていることが明らかとなった。次に、関節リウマチ患者末梢血リンパ球を用いて、同様の検討を試みたが、現時点で、関節リウマチ特異的にアセチル化されたペプチドの検出には至っていない。現在、ENO1の調製法やLC-MSの条件等を変え、関節リウマチ特異的なアセチル化部位の同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的を達成するにあたり、大きく3つの項目がある。そのうち、一つ目の項目は、申請者の以前の研究で検出している、関節リウマチ患者末梢血リンパ球でアセチル化が亢進している蛋白質を同定することであるが、アセチル化亢進蛋白質として2つの蛋白質を同定した。 現在、二つ目の項目の、同定アセチル化蛋白質の診断指標としての有用性を評価するために、関節リウマチ検体を集めるとともに、評価に用いる際の、特異的アセチル化抗体を作製するために、アセチル化亢進蛋白質のアセチル化部位を特定する点に注力している。 また、一方で三つ目の項目の同定アセチル化蛋白質に対する自己抗体の診断指標としての有用性を評価するために、アセチル化亢進蛋白質をin vitroで調製できるよう、その条件設定に着手した。 平成24年度では二つ目の項目までを終わらせる予定でいたが、二つ目の項目のアセチル化部位同定に時間を費やし、現在、解析中である。時間的には余力があったので、平成25年度の予定に記した三つ目の項目も前倒しで、並行して行い、実験条件の検討等などを終えた。そのため、おおむね順調に進展していると選択した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、1)同定アセチル化蛋白質の診断指標としての有用性の評価、2)同定アセチル化蛋白質に対する自己抗体の診断指標としての有用性の評価の2つのアプローチにより、同定アセチル化蛋白質ENO1の診断的意義を明らかにすることを目的とする。 1)を遂行するにあたり、関節リウマチ特異的に亢進しているENO1のアセチル化部位(リジン残基)の特定をENO1の調製法(ENO1の量やプロテアーゼの種類など)やLC-MSの条件を変え、再度試みる。関節リウマチ特異的に亢進している「アセチル化を受けているリジン残基とその周辺のアミノ酸配列」を含むペプチドを合成し、アセチル化ペプチド抗体を作製する。また、2)を遂行するにあたり、ENO1が、関節リウマチ特異的な自己抗体の抗原となりうるかについて調べるために、ENO1をサンプルとし、関節リウマチ患者血清を用いて、ウエスタンブロッティングもしくはELISAを行う。その際に用いるアセチル化ENO1は、リコンビナントで作製したENO1に、in vitroでアセチル化酵素およびアセチルCoAを作用させ、効率的にアセチル化させることで調製する。 また、上記に加えて、同定されたアセチル化亢進蛋白質が酵素であったので、アセチル化が亢進することにより、その酵素の機能がどのように変化するかについて調べる。これにより、関節リウマチのマーカーとしての意義だけでなく、関節リウマチの病態解明のヒントが得られるかもしれない。
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次年度の研究費の使用計画 |
■試薬類、消耗品:平成24年度に引き続き、既存の機器を使い、大量に解析をするには、種々の試薬や消耗品に最もコストがかかるので、これらに重きをおく。具体的には、各翻訳後修飾を検出するのに必要な一次および二次抗体、各翻訳後修飾蛋白質を精製するのに不可欠な抗体カラム用抗体、プロテオミクス関連の消耗品及び試薬、一般的分子物学研究試薬などである。 ■学会参加費:プロテオミクス関連学会であるHUPO(平成25年横浜で開催予定)および日本生化学会(平成25年横浜で開催予定)へ出席し、成果発表および情報取得をするために計上している。 ■その他:平成25年度の解析用抗体作製費は、作製技術や作製に要する時間などを含め、コストパフォーマンスの面から専門に委託する方が、研究全体が効率的に進むと考え、計上している。
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