研究課題/領域番号 |
24790564
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
永井 宏平 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (70500578)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / 翻訳後修飾 / 診断マーカー / 自己抗体 |
研究概要 |
平成24年度は、全身性エリテマトーデス(SLE)や混合性結合組織病(MCTD)などの膠原病患者のリンパ球で確認される自己抗体蛋白質U1-68kの異常な脱リン酸化を簡便に定量する方法を開発するために(1)phos-tag-western blot法、(2)脱リン酸化部位に対する抗体を用いた免疫学的手法の開発(3)等電点western blot法の3種類を検討した。 このうち、(3)の等電点western blot法により異常な脱リン酸化U1-68kを検出することに成功した。本方法により、従来の2D-WB法よりも一日早く脱リン酸化U1-68kを定量することができるようになった。しかし、本方法には多量の血液試料が必要であり、また、白血球からの核分画の分離という専門的な手技が必要になることから、臨床検査に用いるためには、より簡便で感度の高い方法を開発する必要がある。 そこで、臨床検査で使用可能な定量法を開発するために更に、(1)と(2)の開発を試みた。(1)のphos-tag-western blot法はphos-tag SDS-PAGEによってリン酸化の異なるU1-68k亜型を分離したのちに、抗U1-68k抗体を用いて定量する方法であるが、検討の結果、phos-tag SDS-PAGE法にリン酸化の異なるU1-68kを分離するほどの分離能力が無いことが判明した。そこで、本方法は脱リン酸化U1-68kの検出には不適切だと判断した。(2)に関して、今年度は脱リン酸化部位を作成するためにU1-68kのリン酸化部位の同定を試みた。現在までに、リンパ球細胞から免疫沈降法によりU1-68kを単離し、プロテアーゼ消化した後に質量分析(MS)法で翻訳語修飾を解析する手法を確立しており、現在U1-68kの各翻訳後修飾亜型のリン酸化部位の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究目的は、「脱リン酸化U1-68k」を簡便に定量する方法を開発することである。3種類の定量方法(phos-tag-western blot法、脱リン酸化部位に対する抗体を用いた免疫学的手法の開発、等電点western blot法)を検討した結果、「等電点western blot法」による脱リン酸化U1-68kの定量法の確立に成功した。 これにより、当初の計画通りに平成25年度の研究を遂行することが可能である。したがって、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に確立した脱リン酸化U1-68kの定量法を用いて、(1)脱リン酸化U1-68kのバイオマーカーとしての評価、(2)U1-68kのリン酸化に関するキナーゼの特定を試みる。 (1)では、自己免疫疾患患者から採取した白血球サンプルを用いて脱リン酸化U1-68kの定量を行い、「疾患特異性」や「臨床症状との相関」と言った診断マーカーとしての基本性能を評価する。 (2)では、ヒトリンパ球系培養細胞であるJurkat細胞を特異的キナーゼ阻害剤処理やRNAi処理により特定のキナーゼを阻害した後に脱リン酸化U1-68kの量を測定することで、U1-68kの脱リン酸化に関与するキナーゼを特定する。キナーゼ特定後は、当該キナーゼの機能と膠原病の病態とのかかわりを明らかにしていく。 更に、臨床現場で使用可能な脱リン酸化U1-68kの定量方法の確立のために、平成24年度に引き続いて、U1-68kの脱リン酸化部位の同定を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
機器はほぼそろっており、本研究のために新たに購入する設備備品はない。 電気泳動用試薬、細胞培養用試薬、質量分析用試薬、プラスチックチューブ類などの消耗品費として164万円程度、実験結果を論文発表するための投稿料などに10万円程度使用する。
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