本実験では、全身性エリテマトーデス(SLE)や混合性結合組織病(MCTD)などの膠原病患者のリンパ球で確認される自己抗体タンパク質U1-68kの異常な脱リン酸化を簡便に定量する方法を開発し、臨床現場での利用を検討することを目的としている。従来の2次元ウエスタンブロット法では全体で5日かかっていた。そこで、平成24年度までに、2次元ウエスタンブロットに代わる方法を検討し、等電点ウエスタンブロット法が適していることを示した。本方法を用いることで、検出に掛かる時間を5日から2日に減少させることができた。 平成25年度は更に、蛋白質の調整法を改善することで更なる調整法の簡便化を試みた。具体的には、①タンパク質の全細胞抽出液を用いたウエスタンブロット法、②市販の核分画調節キットの使用を検討した。①では、様々な抽出液を用いて、ヒトT細胞由来のJurkat細胞の全細胞抽出液を作成し、一次元のウエスタンブロット法により、最も高い収量でU1-68kを抽出できる条件を探索した。その結果、細胞からのU1-68kの抽出には高濃度のSDSの存在が必要であり、RNAとの複合体からU1-68kを引きはがすために-電荷をもったSDSの存在が不可欠であると考えられた。次に、2%のSDSを含む抽出液で全細胞抽出液を作成し、二次元ウエスタンブロット法でU1-68kのリン酸化状態が可能であるか確認したところ、U1-68kは従来の報告よりも酸性側に検出されSDSがU1-68kに強く結合し泳動を阻害していることが示唆された。そこで、全細胞抽出液を用いてU1-68kのリン酸化状態を解析するためにはSDSの除去処理が必要であると考えられた。②の市販の分画Kitを用いた核分画では従来の報告通りの位置にU1-68kが検出され、本方法により、従来法では4時間以上かかる操作を30分程度に短縮。
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