研究課題/領域番号 |
24790568
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
大山 浩之 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (80572966)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 抗体工学 / ハプテン / バイオマーカー / 抗メタタイプ抗体 / scFv |
研究概要 |
抗原抗体複合体を認識して結合する抗メタタイプ抗体の効率的作製を目指し、まずは動物を免疫する従来法を検討した。本研究では、標的ハプテンに結合する第一のアクセプターとして抗体のH鎖またはL鎖の可変部であるVH、VLドメインをリンカーで連結した人工ミニ抗体であるsingle-chain Fv fragment(scFv) を用いた。scFv-ハプテン複合体をマウスに免疫したのち、ハイブリドーマ法により得られたモノクローナル抗体はいずれもscFvに反応性を示すものであったが、抗メタタイプ活性を示す指標となる標的ハプテンの存在下/非存在下でのシグナルの顕著な増大がみとめられず、scFvのパラトープ以外の部位に結合する抗イディオタイプ抗体であることが示唆された。しかしながら、この結果からハプテンとの結合前後でscFvよりも有意に構造変化するアクセプター分子を用いることにより、抗メタタイプ抗体の産生を誘導しうる可能性が見出された。抗体の可変部から調製したscFvのような低分子化抗体フラグメントを免疫して抗体が産生された報告例は申請者の知る限り皆無であり、人工ミニ抗体を医薬品として用いる研究分野においても新たな知見であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫に用いたハプテンとのアクセプターであるscFvは大腸菌から調製したものをアフィニティーカラムで精製する必要があり、免疫過程の評価を行うスクリーニングにおいてはマイクロプレートに固定化するFabフラグメントが必要であったが、これらの大量調製に予定よりも時間を要した。また、scFv-ハプテン複合体を免疫投与したマウスの血中抗体価の判断が難しかったことなどが計画の遅れの要因である。計画が予定通り進まないときの対応策の一つとして申請書に記載したように、用いたscFvの標的ハプテンに対する親和力に問題がある可能性を考え、in vitro親和性成熟による変異scFvの創製にも着手していたが、大幅に親和力が増大した変異体の作製が予定通り進まなかったことも要因の一つと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
標的ハプテンの結合前後で大きな構造変化が期待できる新たなアクセプター分子を模索する。具体的にはscFvよりも分子量が小さな単一ドメイン抗体 (single-domain antibody;sdAb) やアプタマー分子を用いることで現状の問題点を克服する。sdAbについては既に変異sdAbライブラリーを構築しており、本ライブラリーから目的のハプテンを認識する変異sdAbの創製に取り組んでいる。これらアクセプター分子と標的ハプテンの複合体を形成させるための最適条件を設定したのち、マウスへの免疫投与を始める予定である。また、scFvを用いる方法では期待された成果が得られておらず、当初の計画からの遅れていることから、従来の免疫法よりも短期間で抗体取得が可能であるin vitro免疫にもとりかかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度と同様に機械などの購入予定はなく、免疫や、アクセプター分子の創製にかかるランニングコストで研究費の大半を使用する予定である。
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