抗原抗体複合体を認識して結合する抗メタタイプ抗体の作製を目指し、人工ミニ抗体 (scFv) で動物を免疫する従来法を検討したが、初年度の期間内では期待通りの結果が得られなかった。しかし、本研究で得られた数種のモノクローナル抗体はscFvに結合する抗イディオタイプ抗体であったことから、抗体の可変部が免疫原性を有することが明らかになった。これは抗体を医薬品として扱ううえで非常に重要な知見であると推察される。最終年度では、標的抗原の結合前後でscFvよりも大きな構造変化が期待できる新たなアクセプター分子として単一ドメイン抗体 (sdAb) やアプタマーを用いることで抗メタタイプ抗体の効率的創製を試みた。エストラジオール (E2) をモデル抗原として作製した変異sdAbライブラリーからファージ提示法を活用する手法により、E2特異的な変異sdAbの創製を試みたところ、元の野生型sdAbよりも強い結合能を示すクローンを14種の単離に成功した。今後、詳細な結合解析を行ったのち、抗メタタイプ抗体のin vitro選択系を構築する。また、本研究の遂行過程で変異sdAbライブラリーのなかに抗メタタイプ活性を有するクローンが存在すると示唆されるデータが得られており、この結果から当初の実施計画とは異なる戦略で抗メタタイプ抗体が得られるのではないかと考えている。アプタマーはscFvやsdAbよりも分子量が小さく、複合体前後の変化が大きいことが既知である。本研究では既報のE2結合アプタマーを用いて変異scFvライブラリーからE2の存在下、非存在下でシグナル変化が認められる変異体の探索を試みた。複合体を認識すると推定される変異体が8種得られているが、これらのクローンがE2の用量依存的にメタタイプ活性を示すかどうか現在検討中である。本研究課題の期間を通じて抗メタタイプ抗体創製の基盤が出来つつあり、今後、得られた成果を活用して効率的創製への第一歩となることを期待している。
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