研究課題/領域番号 |
24790569
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60351798)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病 |
研究概要 |
インターロイキン18(IL-18)は炎症性サイトカインであるが、感染症だけでなく糖尿病でもその増加が認められ、糖尿病性腎症などの合併症の発症などに関わっていると考えられる。本研究の目的は、糖尿病のインスリン抵抗性を引き起こすと考えられている一酸化窒素(NO)とIL-18との関連を解明し、糖尿病との関連性や新たな糖尿病疾患マーカーとしての有用性を検討するものである。 平成24年度の計画では、NOのIL-18に及ぼす影響を主に解析した。具体的にはIL-18をリコンビナントタンパク質として大腸菌から精製する方法を確立し、in vitroの系においてNOと反応させ、その影響をウエスタンブロッティング法やフローサイトメトリー法にて解析した。その結果、IL-18はニトロ化を受けることを明らかとした。 次にニトロ化される部位の同定を行った。新たに変異を導入したIL-18を5種類作成し、同様に大腸菌から精製して実験に用いた。その結果から特にニトロ化を受けやすいアミノ酸を同定することができた。 NOによりニトロ化されたIL-18の生物学的機能の変化についても検討を行った。解析にあたってはまず培養細胞を用いて、基礎的な検討を行った。培養細胞はマウスプライマリー細胞や細胞株を用いた。IL-18のもつ重要な機能であるインターフェロンγの産生誘導活性などにおいて、ニトロ化を受けることによりその作用の変化が認められた。また、NOはIL-18の直接的な修飾だけでなくIL-18の発現にも関与している可能性を示唆するデータが得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の最終的な目的は糖尿病におけるIL-18の役割を解明し、臨床検査項目としての有用性を評価することにある。そのために本研究では、①糖尿病におけるIL-18の機能評価 ②活性酸素種によるIL-18構造変化の化学的解析 ③ニトロ化IL-18抗体の作成 ④ニトロ化IL-18抗体を用いたELISAなどの検出系の確立 ⑤糖尿病モデルマウス及び糖尿病患者の血清を用いた検討 を行いたい。 平成24年度は上記目的のうち、①糖尿病におけるIL-18の機能評価 ②活性酸素種によるIL-18構造変化の化学的解析 については当初の計画通りに進行している。③④は現在進行中であり、当初の計画通り平成25年度以降の研究項目として検討していく予定である。⑤については糖尿病モデルマウスの血清を入手でき次第、予備的な検討として③の抗体が作成できるまでは、既存の市販抗体を数種類組み合わせて検討していく予定である。 以上のことより、研究はほぼ予定通りに進行しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度はニトロ化されたIL-18に反応する抗体を作成し、検出系を確立することである。すでに標的とする部位の同定は終了しており、抗原部位としての有用性検索を行っているところである。その後、ペプチドの合成を行い、ウサギに免疫する予定である。抗体ができ次第、ELISAおよびウエスタンブロッティングによるニトロ化IL-18の検出系を構築する検討に進む予定である。 この抗体作成実験に並行して、糖尿病におけるIL-18の役割解析を前年度に引き続いて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はニトロ化IL-18の検出系を確立することを目標とする。研究が大幅に進んだ場合を想定して抗体作成費用を平成24年度に申請していたため繰越金が生じた。現在抗体作成に取り掛かっているため、この繰越金は計画通り抗体作成費用として今年度に使用する予定である。ニトロ化IL-18の検出系を確立したのち、糖尿病モデルマウスを用いて糖尿病の病態とニトロ化IL-18の相関関係を検討し、ニトロ化IL-18の糖尿病での役割を明らかにしたい。
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