今年度は、チオールプローブを用いたアミノグリコシド(6')-N-アセチル基転移酵素(AAC(6'))産生菌の迅速検出法開発をめざし、反応条件の最適化を行った。アセチルCoA、チオールプローブ(DTNB)、およびアミノグリコシドを含む溶液を検出試薬として調整した。20ulの菌溶解液と180 ulの検出試薬を96 wellプレート上で混合し、37℃で15分間反応させた後、412 nmにおいて呈色反応を観察した。各種界面活性剤を用いて菌体溶解液を調製し反応条件の最適化を試みたが、AAC(6')非産生菌においても呈色反応が見られたことから、DTNBがTNBに分解される反応を界面活性剤がAAC非依存的に促進している可能性が強く示唆されたため、超音波破砕による菌体液の調整が適していることが分かった。至適濃度を検討する実験においては、検出試薬に含まれるアセチルCoAおよびDTNBの濃度を変えた場合、濃度依存的に呈色反応が上昇する一方で、アミノグリコシドは濃度を変えても、呈色反応に影響がないことが分かった。臨床分離株を用いた本検出法の評価試験では、AAC(6')産生株において呈色反応が起こる一方で、感受性株においても呈色反応が確認され、現在の検出系では擬陽性が得られる可能性が強く示唆された。チオールプローブを用いた蛍光法による耐性菌検出に関しては、DTNBと同様に菌体溶解液を調製し蛍光反応を観察した結果、AAC(6')を産生株で蛍光反応は得られたものの蛍光シグナルは弱く、迅速診断法に適していないことが示唆された。
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