研究課題/領域番号 |
24790576
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
永井 潤 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 技術補佐員 (20608369)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リゾホスファチジン酸 / 慢性疼痛 / cPLA2 / iPLA2 / 質量分析定量 / マイクログリア / LC-MS/MS / エピジェネティクス |
研究概要 |
本研究では、線維筋痛症などの種々の慢性疼痛について、神経障害性疼痛誘発因子リゾホスファチジン酸(LPA)合成/作用の観点から、その責任脳領域と責任分子を明らかにし、LPA合成機構および機能解析を通じた治療基盤形成を目的とする。今年度は、神経障害性疼痛モデルにおける責任領域である脊髄において、新規のTOF-MS法を用いたLPA定量法を確立し、神経障害初期のLPA合成はcPLA2とiPLA2の活性化に始まることを明らかにした。また、cPLA2には6種類、iPLA2には9種類の分子種が同定されているが、遺伝子発現の定量解析の結果、神経系においては特にcPLA2αおよびiPLA2β~εが主に発現していた。特にcPLA2αについては、免疫染色の結果、神経に多く発現していたことから、神経がLPAを産生していることが示唆される。また、脳内のLPAを LC-MS/MSを用いてネガティブモードにて直接解析するために、前処理方法および一斉定量するLC-MS/MSの条件を確立した。他にも、申請者は神経障害性疼痛モデルのみならず、リウマチや脳卒中後の慢性疼痛が、LPA1受容体遺伝子欠損マウスで消失することを見出したので、今後は確立したLPA定量方法を用いて、これらの病態におけるLPA産生部位の同定を目指す。一方、所属研究室ではHDAC阻害薬がNRSF/REST機構を解除し、末梢神経障害性疼痛における陰性症状を改善することを見出している。これらの研究結果を基に、今年度は陰性症状の責任部位であるDRGにおいて、次世代シーケンサーを用いたChip-Sequence法のための前処理および解析方法を確立したので、次年度では種々の慢性疼痛モデルでのエピジェネティクス解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経障害性疼痛の責任部位である脊髄において、新規のTOF-MS法を用いたLPA定量に成功しており、さらにその脂質制御機構についてcPLA2とiPLA2の活性化を証明した。さらに、cPLA2とiPLA2については、遺伝子発現解析の結果、主要な分子種をそれぞれ同定しており、特にcPLA2の活性化は神経で誘発され、このことはLPA産生細胞同定の重要な手がかりとなる。また、線維筋痛症の脳内責任部位同定を目指して、LC-MS/MS法を用いたLPAの一斉解析のために、前抽出およびLC-MS/MSの条件を確立したので、今後は病態脳でのLPA定量を行う。一方、末梢神経障害性疼痛陰性症状の責任部位であるDRGにおいて、次世代シーケンサーを用いたChip-Sequenceの解析条件を確立し、今後は種々の病態モデルにおいてエピジェネティクス解析が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
慢性疼痛疾患は、その原因により責任脳領域が異なることが予想されるので、筋痛性、精神ストレス性線維筋痛症やリウマチを含むモデルごとのLPA産生領域を確立したLC-MS/MS法により定量解析を行う。また、LPA関連遺伝子群の変調に関しては、DNAのメチル化やヒストンのアセチル化などのエピジェネティクス機構の観点からその制御機構を明らかにする。特にLPA合成や作用との関連が示唆される遺伝子については、遺伝子欠損マウスやsiRNAをLPA駆動領域に脳内局所投与を行い、その責任性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
病態ごとのLPA責任領域を明らかにするために野生型マウスや遺伝子改変マウスを用いて、線維筋痛症やリウマチを含む複数の全身性疼痛疾患モデルマウスを作成する。また、LPAの定量解析には、LC-MS/MSの維持および解析のための消耗品を必要とする。エピジェネティクス解析には、DNAメチル化およびヒストンアセチル化などの長期性の記憶機構に着目し、その解析を行うため分子生物学試薬を必要とする。また、標的遺伝子の責任性の検証には、siRNAや阻害化合物を購入する。
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