H24およびH25年度を通じて、マウスの眼窩下神経を完全切断することより、視床VPM核細胞におけるシナプス外GABA電流(tonic GABA電流)が、求心性内側毛帯線維の再改編現象に先立って増強することを見出し、浸透圧ポンプでのシナプス外GABA-A受容体作動薬持続処置によるtonic GABA 電流の増強が、求心性内側毛帯線維を再開編させることをも明らかにしてきた。 H26年度では、H25年度より進めていたレンチウイルスベクターを用いたシナプス外GABA-A受容体のノックダウンによる検討を進めた。この実験では、シナプス外GABA-A受容体の必須構成サブユニットであるalpha4サブユニットにloxP配列を組み込んだ遺伝子改編マウスのVPM核に、Cre-GFP発現レンチウイルスベクターを処置し、シナプス外GABA-A受容体をノックダウンさせて、眼窩下神経を切断する前にtonic GABA電流の発生を欠損させた。その結果、眼窩下神経の切断前にtonic GABA電流の欠損を行うと、神経切断による内側毛帯線維の再開編現象が抑制されることが明らかになった。この結果より、眼窩下神経切断下のVPM核では、神経切断後早期からVPM核細胞上でtonic GABA電流が増加し、興奮性内側毛帯線維の再改編を修飾している可能性が示唆された。 一方、in vivo unit記録において、眼窩下神経切断下におけるVPM核細胞は、著名に神経活動が減弱していることが明らかになった。これは、眼窩下神経切断によるtonic GABA電流の増加が、神経細胞活動を抑制的に調節したためと考えられる。
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