研究課題/領域番号 |
24790583
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
萩原 裕子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究員 (90468207)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分界条床核外側部 / CRHニューロン / ドーパミンニューロン / 痛み / 性差 / 情動 / パッチクランプ / GFP |
研究概要 |
本研究の目的は、分界条床核外側部のCRH(corticotropin-releasing hormone)ニューロンがドーパミンニューロンの調節を受けながら痛みの性差と情動に関与する、という事を電気生理学的に明らかにすることにある。そのためにまず、生きたまま分界条床核外側部のCRHニューロンを同定する必要があった。当初の予定であったFreedmanのGFP-CRHマウスのGFP蛍光が弱く使用に耐えられない事がわかった。そこでB6.FVB-Tg(Crh-cre)1Kres/J(ジャクソン社)とB6.Cg-Tg(CAG-floxed Neo-EGFP)REP08Osb(理研)を掛け合わせる事にした。これはCAGプロモーターにクラゲ緑色蛍光タンパク質 (GFP) 遺伝子を接続した導入遺伝子を持ち、CAGとGFPのところにLoxPが挿入してあり、また、ネオマイシン耐性遺伝子の下流にpoly Aを導入してあるので、このままではGFPを産生しない。しかし、マウスCRH遺伝子プロモーターにCre遺伝子を接続した導入遺伝子を持つマウスとかけあわせることによりCre ricombinaseが発現するとLoxPが切り出され、ストップコドンがなくなるのでGFPを発現する仕組みである。CAGプロモーターは強力であり首尾よくいけば分界条床核外側部のCRHニューロンに強いGFPの蛍光が期待できる。そこで再度、倫理委員会、遺伝子組換え委員会、動物実験委員会に申請し、ジャクソン社からマウスを輸入し、および、それらマウスを増やすまでに相当の時間を要してしまった。しかし首尾よく繁殖し、掛け合わせたマウスが妊娠、出産を確認し、ジェノタイプを行い、ほぼ25%確率で目的のマウスが完成したところで平成24年度が終了してしまった。また、パッチクランプの手技取得に予測を超えて時間を要したが、要件はクリアーした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の目的は、分界条床核外側部のCRH(corticotropin-releasing hormone)ニューロンがドーパミンニューロンの調節を受けながら痛みの性差と情動に関与する、という事を明らかにすることにある。そのためにまず本年度、生きたまま分界条床核外側部のCRHニューロンを同定する必要があった。 1)Freedmanの持つGFP-CRHトランスジェニックマウスのGFP蛍光が弱く使用に耐えられなかった事 2)実験の承認に、動物実験委員会、組換え動物実験委員会など、予測以上に時間がかかった 3)ジャクソン社からマウスを輸入したので時間がかかった 4)単純なトランスジェニック動物ではなく、1段階、繁殖過程がふえたため、妊娠で約3週間、性成熟するまで約7週間、合計約3ヶ月、予定よりも多くの時間が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
全ての問題は解決してジェノタイプを行った。およそ25%の確率で首尾よく、CRHのプロモーターで駆動されたCreリコンビナーゼにより目的のSTOPコドンが切り出されたeGFPマウスが確認された。マウスは順調に繁殖している。また、新たなパッチクランプシステムを立ち上げたので自分専用として使用でき、今後は、予測以上に格段に実験は早くすすむと考えられる。すなわち、合計2年間で、本研究の目的は遂行できると予測している。 1)マウスを新たにかけあわせ首尾よくCreでSTOPコドンを切り出したマウスができたので、GFP陽性のニューロンが分界条床核外側部のCRH(corticotropin-releasing hormone)ニューロンである事を確認する。脳室内にコルヒチンを投与し、24時間後にCRH抗体を用いた免疫組織化学を行う。必要があればin situ hybridizationを行う。 2)ホルマリンテストを行い、雌雄マウスの急性スライスを作成する。蛍光顕微鏡下でGFP陽性細胞にボルテージクランプを行い、第一相、中間相、第二相のminiature Excitatory Post Synaptic Currentやminiature Inhibitory Post Synaptic Currentを検討する。 3)分界条床核外側部の上を電気刺激して興奮性入力を、内側を刺激して抑制性入力をそれぞれシナプス入力として電流応答をとらえる。 4)その時のpaired pulseやLTP、LTDを観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に昨年度に必要な消耗品は全て購入したので、実験を継続するのに必要なものは特にない。すなわち、順番をかえて、初年度必要であった備品を新年度に、新年度に必要であった消耗品費を初年度と若干予定を変更した。しかし、合計の2年間で、本研究の目的を達成するための研究費は、予定通りである。消耗品費は新たに追加した免疫組織化学関連のみである。尚、新たにパッチクランプシステムを立ち上げたが、そのおり、アナログ-デジタル変換機が規格とあわなかったため、新年度に購入予定となるが、前述したように、消耗品はすでにあるので、問題はない。
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