研究課題/領域番号 |
24790588
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
栄徳 勝光 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (50552733)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インジウム化合物 / 産業医学 / エピジェネティクス / 酸化ストレス / 呼吸器炎症 |
研究概要 |
アカタラセミアマウスと野生型マウスを用いて酸化インジウム(In2O3)の気管内投与を行ったところ、共に体重増加の抑制、肺相対重量増加、肺組織の変化が見られたが、野生型マウスに比べてアカタラセミアマウスでより顕著な影響が見られた。一方、血清中インジウム濃度については、投与量の増加に伴い血清インジウム濃度(In-Se)が上昇したものの、アカタラセミアマウス、野生型マウスの間で有意な差は認められなかった。この結果から、アカタラセミアマウスが、In2O3曝露に対してより感受性が強いことが示された。アカタラセミアマウスと野生型マウスの違いはカタラーゼの一アミノ酸変異によって四量体が形成出来なくなることにより、カタラーゼ活性が欠損する点であるが、野生型マウスと比べてIn2O3曝露に対する感受性が強まる原因は、カタラーゼ活性の低下に起因する活性酸素の除去能力の低下によるものと予想される。 フラットパネルディスプレイの材料であるIn2O3の産業的価値は、世界のIn消費の大半を占める我が国において非常に高く、In2O3曝露による健康障害発生直後からインジウム化合物の毒性評価、製造工場やリサイクル工場などの職域を中心とした疫学調査が並行してなされ、作業環境の許容濃度が設定されたものの、一方でまだ明らかにされていない低濃度曝露の影響を検討することも継続して取り組むべき課題として残されている。 In化合物の毒性研究において、今回遺伝子変異マウスを用いて、酸化ストレスと肺障害の関係性を示唆する結果が得られたことにより、これまでと異なる切り口から今後の研究の指針を示す重要な手がかりを得ることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インジウム曝露野生型マウス、並びにアカタラセミアマウスのBALF並びに肺組織切片の免疫細胞を用いた遺伝子発現量解析系及びゲノムDNAメチル化解析系の確立に向けて、マウスES細胞を用いてqPCR, ウェスタンブロットの実験系の確立を進めているものの、実験系の確立に時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き遺伝子発現解析系及びDNAメチル化解析系の構築を進め、培養細胞から抽出したゲノムDNA並びにmRNAを用いて、COX2, PU.1, NF-κB, TGF-βなどの遺伝子の発現量解析とそれらの遺伝子プロモーターのメチル化解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に培養細胞用の培地と遺伝子発現解析及びDNAメチル化解析用の試薬等の消耗品費に当てるとともに、研究打ち合わせや学会参加、系の構築のための実験手技修得のための旅費にも一部当てる。また、検体等の運送費やシーケンス解析等の外注費も発生する。
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