研究課題
国内外で10例報告されているインジウム肺は、その臨床像は肺胞蛋白症及び間質性肺炎や肺線維症等の間質性肺疾患が認められているが、その多様なインジウム肺の病態を説明しうる分子機構は未だ明らかとなっていない。予防法や治療法の開発に向けて、吸入曝露チャンバーのような特殊な設備を必要とせず研究室単位で実施可能な気管内投与法によるインジウム肺の動物実験モデルは、ハムスターやラットなど小型実験動物の中でも比較的操作しやすい動物を用いて先行しているが、より安価なマウスでの実験系構築はこれまでなされていなかった。昨年度に着手した気管内投与法の器具の改良により、肺胞蛋白症の病理像を顕著に示すインジウム肺マウスモデル系の構築に成功した。10mg/kgの酸化インジウム(In2O3)のをC57BL/6の8週齢オスマウスに週2回8週間投与し、投与終了後4週間経過後に肺を摘出し、病理解析と遺伝子発現解析を行った。肺胞蛋白症の特徴である肺胞内への PAS陽性沈着物の蓄積が認められた個体について間質性肺炎の関連遺伝子の発現解析を行った。間質性肺炎マーカーKL-6、SP-DのマウスホモログであるMuc1, SftpdについてはmRNAレベルでの発現上昇が確認された。さらに間質性肺炎の慢性化によって発症する肺線維症の関連遺伝子である組織性メタロプロテアーゼ阻害因子Timp1の発現も確認された。これらの結果は、インジウム曝露の病理所見として肺胞蛋白症が見られる一方で、遺伝子発現としては間質性肺炎が進行していることを示唆している。肺胞蛋白症が有為に認められる症例は曝露後1, 2年、間質性肺疾患が有為に認められる症例は曝露後4~20年に診断されていることから、インジウム曝露の急性症状として肺胞蛋白症が発症し、長期経過後に肺線維症へと置き換わると考えられているが、本結果はこの説を支持する結果と考えられる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Environ Int.
巻: 77 ページ: 16-24
10.1016/j.envint.2015.01.002.
J Occup Health.
巻: 57 ページ: 69-80
10.1539/joh.14-0111-OA
Ind Health.
巻: 52 ページ: 256-261