研究課題/領域番号 |
24790589
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
辻 雅善 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (30461809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 飲酒量 / 飲酒履歴 / エチル脂肪酸 / 毛髪 / 固相抽出法 |
研究概要 |
ライフスタイルの変化により正確な飲酒量の把握が難しくなってきている。そこで本研究では、正確な飲酒量の把握のため毛髪内エチル脂肪酸を用いたモニタリングシステムの確立を目指している。本年度は毛髪内エチル脂肪酸を用いた簡便な測定方法を確立するため以下の3項目を検討した。 1.温度条件の検討:毛髪内エチル脂肪酸の測定に用いるGC/MSの温度条件を検討した。先行研究を参考に適当なエチル脂肪酸混合標準液を用いて実施した。結果、当該GC/MSにおける最適温度条件は、初期温度150℃、昇温25℃/min、最終温度300℃とした。 2.最適エチル脂肪酸の検討:モニタリングに適したエチル脂肪酸の選定として、多くの文献でEthyl laurate、Ethyl myristate、Ethyl palmitate、Ethyl oleate、Ethyl stearateの5種類がアルコールと関連すると報告されている。実際の毛髪を用いて測定したところ、中でもEthyl myristate、Ethyl palmitateが精度よく検出可能であった。 3.簡便な前処理の検討:(1)毛髪粉砕:従来は毛髪を溶解させ毛髪内成分を抽出するものが多いが、本研究では粉砕機器を用いて前処理の時間短縮を試みた。粉砕条件を検討したところ、バッファーあり、粉砕用ビーズはステンレス3.2mm径×8個、回転条件は4800rpm、5minが最適であった。(2)エチル脂肪酸抽出:先行研究では抽出にHS-SPMEを用いた報告が多い。我々は他に、固相抽出法、MonoTrapという捕集ツールを使って抽出を行い3種類の方法を比較した。結果、時間の短縮、抽出精度の良さから固相抽出法が最適であった。 本年度において、毛髪内エチル脂肪酸を用いて飲酒量を簡便に測定することを可能にした。来年度以降、この測定法を実際の健康集団を対象とした疫学研究に適用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の達成目標であった、「飲酒量のモニタリングに適しているエチル脂肪酸の選定」および「毛髪内エチル脂肪酸の簡便な測定方法の確立」をおおむね達成できたため。飲酒量のモニタリングに適しているエチル脂肪酸は、Ethyl myristate、Ethyl palmitateが精度よく検出可能であった。一方、毛髪内エチル脂肪酸の簡便な測定方法として、前処理に粉砕機器を用いること、エチル脂肪酸抽出の際に固相抽出法を用いることで、前処理時間の大幅な短縮に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、本年度に確立した測定方法を使用して、健康集団を対象としてフィールドにおいて検証する。申請者が所属する講座では、全国調査で飲酒と喫煙に関するいくつかのフィールドを確立している。平成25年度は、まず同意を得た健康成人ボランティアに直近1ヶ月の毛髪と飲酒量の記録を提供してもらい、その毛髪内エチル脂肪酸と飲酒量の相関を検討する。本調査として、調査地の住民台帳から無作為に一般成人350人(年齢20歳から65歳、男:女= 1:1)を抽出し同意を得る予定である。第一の過誤: 両側α= 0.05、第二の過誤: β= 0.05とした場合、相関係数を分析に用いるときに必要な対象者数の合計は期待される効果量を0.20とした場合319人である。本研究は相関係数分析に必要なサンプルサイズを十分に満たす人数である。対象者には飲酒量を把握するための質問紙票記載と毛髪の提供をしてもらう。その毛髪を根元から1cmごとに切断し、本年度に確立した方法を用いエチル脂肪酸を測定し飲酒履歴を把握することを目指す。この測定結果と質問紙票を比較して、現行の調査方法の信頼性も検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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