研究課題/領域番号 |
24790593
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
白土 健 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (60559384)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 老化 / マクロファージ / Toll様受容体 / 炎症 / ヘキソサミン生合成経路 / 糖鎖修飾 |
研究概要 |
【目的】マクロファージ(MΦ)のToll様受容体(TLR)シグナル伝達能は老化に伴って低下することが知られているが、その分子機序はまだ不明な点が多い。一方、グルコース代謝経路のうちヘキソサミン生合成経路の代謝中間体であるグルコサミンをMΦに取り込ませると、O-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾の亢進に伴いリン酸化が阻害されるため、TLRシグナル伝達能も低下することが示唆されている。そこで本年度は、老化によるMΦのTLRシグナル伝達能低下におけるヘキソサミン生合成経路の役割を明らかにするため、その律速酵素であるグルタミン-フルクトース-6-リン酸アミノ基転移酵素(GFAT)及びO-GlcNAcの転移酵素OGTと分解酵素OGAの発現量に及ぼす老化の影響を検討した。【方法】8週齢及び1年齢のBALB/c雄性マウスの腹腔からそれぞれ常在性MΦを常法により採取した。MΦをリポ多糖(LPS)で刺激し、6時間後に培養上清中のTumor necrosis factor (TNF)-αの濃度をELISA法で測定し、細胞内のGFAT各アイソフォーム(GFAT1・GFAT2)及びOGT・OGAのmRNA発現量とタンパク質発現量をそれぞれRT-PCR法とウェスタンブロット法で解析した。【結果】LPS刺激によるMΦのTNF-αの産生量は8週齢に比べ1年齢の方が明らかに低かった。GFAT1のmRNA及びタンパク質の発現量は両齢間で差がなかったが、GFAT2ではいずれのレベルも共にその発現量は8週齢に比べ1年齢の方がおよそ2.5倍高かった。一方、OGT及びOGAのmRNA発現量は共に8週齢に比べ1年齢の方が高かったが、いずれもタンパク質発現量では両齢間で差がなかった。【結論】MΦのGFAT2の発現量は老化により増加し、それに伴いヘキソサミン生合成経路の活性も高まる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画では、TLR下流のシグナル伝達タンパク質や転写因子のO-GlcNAc修飾レベルと各種のO-GlcNAc修飾調節因子の発現レベルに及ぼす老化の影響を明確にするため、細胞内のタンパク質O-GlcNAc修飾レベル及びヘキソサミン生合成酵素やO-GlcNAc転移酵素・分解酵素の発現量について、高齢及び若年の各マウスとの間で比較・検討することを予定していた。このうちTLR下流のシグナル伝達タンパク質や転写因子など各タンパク質のO-GlcNAc修飾レベルの解析に必要なタンパク質試料に不足が生じたため、全細胞タンパク質を用いたO-GlcNAc修飾レベルの解析に留まった。一方、老化に伴って発現量が変化することが明確となったO-GlcNAc修飾調節因子の遺伝子の強制発現またはノックダウンによる細胞機能解析は、平成25年度の研究計画として予定していた。しかし、本年度に遂行した研究において老化に伴って発現量が増加することが明らかとなったGFAT2については、その全長cDNAを組み込んだプラスミド発現ベクターを作製し、マクロファージ細胞株RAW264.7細胞に一過性及び安定的に導入して、その機能解析をすでに開始している。以上より、本研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、老化に伴って発現量が増加することが明確となったGFAT2の機能的役割を明らかにするため、その全長cDNAを組み込んだプラスミド発現ベクターを導入したマクロファージを用いて細胞機能解析を遂行する。さらに、TLR下流のシグナル伝達タンパク質や転写因子のO-GlcNAc修飾レベルに及ぼす老化の影響を明らかにするため、高齢及び若年の各マウスとの間で比較・検討する。以上の検討より得られた結果をもとに、老化に伴うマクロファージ機能低下におけるヘキソサミン生合成経路及びO-GlcNAc修飾の役割を明確にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に繰り越した研究費は、TLR下流のシグナル伝達タンパク質や転写因子のO-GlcNAc修飾レベルに及ぼす老化の影響を明確にするために必要な実験動物(若年及び高齢マウス)を購入するために使用する。
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