研究課題/領域番号 |
24790594
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
間瀬 純治 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (30506126)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 職業性ストレス / 心理ストレス / ストレス要因 / 視床下部-下垂体-副腎皮質系 / 毛髪 / コルチゾール |
研究概要 |
【毛髪の粉砕方法】毛髪の量が10mg程度の場合、液体窒素を用いたハンマー粉砕およびガラスホモジナイザーによる粉砕は可能だが、研究に必要な200mgの場合、時間をかけても測定サンプルの均質な粉砕が困難であった。また、ハンマー破砕は毛髪が飛散し回収困難な場合があることが判明した。今後、組織破砕用ボールを用いた組織・細胞破砕機器の使用を検討する。 【メタノール浸析による毛髪コルチゾールの抽出条件】文献上、抽出の時間や温度などの条件に未だ一定の見解が得られていない。そこで、研究計画1年目の当該年度は本研究対象者以外の被検者1名の毛髪を採取し、毛髪中に蓄積したコルチゾールの正確性・再現性のある抽出条件について検討した。毛髪をメタノールに浸析してコルチゾールを抽出する時間は8、16、24、32時間の4条件、抽出中の温度と振盪は(室温で振盪なし、室温で振盪あり、45℃で振盪あり)の計3条件とし、その組み合わせの計12条件について3サンプルずつ測定に用いた。測定サンプルには免疫抗体法(ELIZA法)を応用した唾液コルチゾールキットを用いた。その結果、設定した抽出時間、温度、振盪の条件間におけるコルチゾール抽出量について、統計学的に有意な差はみられなかった。今後、より短時間で効率的かつ正確に抽出できる条件について検討する。 【疫学調査】複数の事業所に勤務する労働者を対象として、自記式質問紙調査により職業性心理ストレス要因を調べ、そのうち同意を得た対象者39名の頭頂と後頭部の間の頭皮直上から毛髪 100本程度を採取した。質問紙調査と毛髪採取は3ヶ月間隔で2回実施した。質問紙調査には職業性ストレスモデルを応用した2つの尺度と新たな職場の資源に関する項目を含む調査票の計3尺度を用いた。今後、職業性心理ストレス要因の多寡を算出し、その変化と測定した毛髪コルチゾール量の変化の関連を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していた抽出条件の検討および毛髪の破砕方法に関する検討と疫学調査を開始した。一方で、新たな検討の必要性も生じたことから、本評価とした。イソプロパノールによる洗浄・乾燥後に毛髪を粉末状にする方法として液体窒素を用いたハンマー粉砕およびガラスホモジナイザー使用は本研究には不向きであったため、ハサミの使用を選択した。その後、学会で粉砕用小型ボールを用いた組織・細胞粉砕器の使用を提案された。毛髪をハサミで刻む場合、サンプル間の均質性に問題があることから、粉砕用小型ボールを用いた組織・細胞粉砕機器を導入する必要性があると判断された。 当該年度に毛髪コルチゾールの抽出条件を調べ、8、16、24、32時間では温度、振盪によらず安定して毛髪コルチゾールを抽出できることが明らかとなった。そこで、疫学調査で収集した毛髪サンプルからのコルチゾール抽出は8時間室温、振盪なしの条件で行う。ただし、より短時間で効率的な抽出時間や、抽出時の加温、振盪の有無による影響についてを継続して検討する。 複数の事業所に勤務する労働者を対象として、職業性心理ストレス要因に関する自記式質問紙調査と、そのうち同意を得た対象者39名の毛髪100本程度の採取を2回実施した。質問紙調査には、Demand-Control-Support ModelおよびEffort-Reward Imbalance Modelを応用した2つの尺度と、職場の資源に関する新たな項目が採用された新職業性ストレス簡易調査票を使用した。今後、サンプル粉砕方法の検討とデータの入力、集計により職業性心理ストレス要因の多寡を算出する。年齢や性別などを調整したうえで、職業性心理ストレス要因の変化が測定した毛髪コルチゾール量に与える影響、もしくはその関連を解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、毛髪の粉砕方法やコルチゾール抽出条件について追加的検討、パーマ等の毛髪ケアをしている者の毛髪サンプルの取り扱い方法の検討、職業性心理ストレス要因と毛髪コルチゾール量の関連の解析、発表を実施する。具体的手順は以下の通りである。 1.イソプロパノールで洗浄・乾燥後の毛髪の粉砕に粉砕用ボールを用いた組織・細胞粉砕機器を導入する。 2.設定した条件の中では、時間、温度、振盪によらず安定して毛髪コルチゾールを抽出できることが明らかとなった。より短時間で効率の良い条件の究明は新たな知見の集積につながるため、次年度、新たな条件である1~8時間および加温、振盪の有無を設定したうえで取り組む。 3.研究最終年度は、職業性心理ストレス要因の変化による毛髪コルチゾール量への影響を解析する。なお、対象者で毛染め、脱色、パーマ等の毛髪ケアを行っている場合、毛髪に含まれるコルチゾール量に影響する可能性があるため、職業性心理ストレス要因の毛髪コルチゾール量への影響の解析からは除外するが、毛髪ケア方法の違いと毛髪コルチゾール量の関連については別途検討する。 4.次年度は対象者から回収したDemand-Control-Support ModelおよびEffort-Reward Imbalance Modelを応用した尺度と新職業性ストレス調査票の各データを入力し、集計により各職業性心理ストレス要因の多寡を算出し、毛髪から抽出したコルチゾール量を測定する。最終年度は、3ヵ月間隔で2回測定した職業性心理ストレス要因の変化の有無が毛髪コルチゾール含有量に与える影響、もしくはその関連を年齢や性別などを調整したうえで統計学的手法を用いて解析する。 5.以上から明らかとなった知見に関して産業保健や精神神経内分泌関連の学術雑誌や学会で発表、公表し、Web上にも掲載する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究の推進に必要となる物品を計上した。 1.毛髪からコルチゾールを効率的で均質に抽出するための前処理に必要な毛髪を粉砕するための粉砕用小型ボールを用いた組織・細胞粉砕機器を導入することとした。研究費によってこの機器の使用に必要な物品を購入する。 2.当該年度にも使用した抗原抗体反応による酵素免疫測定(ELIZA法)を応用した唾液コルチゾール測定キットを用いて毛髪中から抽出したサンプル溶液のコルチゾールを比色定量する。唾液コルチゾール用の測定キットを用いることとしているが、他の文献で高速液体クロマトグラフィーよりも使用頻度が高いため、このキットの使用を選択した。研究目的である対象者の毛髪コルチゾールの測定と測定条件の検討も含め20キットを購入する。 3.対象者のうち、毛染め、脱色、パーマ等の毛髪ケアを行っている場合、毛髪に含まれるコルチゾール量に影響する可能性がある。よって、特に毛髪ケアを行っていない対象者とは区別して解析する。毛髪ケアの違いと毛髪コルチゾール量との関連を別途検討する。解析および影響の違いに関する検討には、年齢や性別を調整し統計学的手法を用いて解析するために統計ソフトが必要となる。 4.疫学調査データの処理に専ら用いるコンピューターを購入する。個人情報を保護する倫理的な観点から個人情報に関するデータ管理のみに使用する。最終年度に行う職業性心理ストレス要因の変化が毛髪コルチゾール含有量に与える影響もしくは関連については、上記3の統計ソフトを使用し、解析する。 5.職業性心理ストレス要因のコルチゾール量への影響、もしくはその関連を解析し、発表する。この新たな知見に関する発表に際し、現在の各分野での正確な情報を得るとともに、精神心理学、産業保健、内分泌学の関連書籍を購入し、発表に必要な論文校正費等を計上している。
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