研究実績の概要 |
毛髪に含まれるコルチゾールは、その含有量が数か月間の分泌量を反映することが報告されるなど、毛髪が長期間のストレス状態の把握に適した生体試料である可能性に脚光があたっている。Raulら(2004)によってメタノールを用いたヒトの毛髪コルチゾールの抽出に関する報告がなされたが、抽出時間や温度などの抽出条件に未だ一定の見解が得られていない。そこで、本研究では毛髪コルチゾール抽出時間、温度、振盪の有無ついて検討した。 対象者から採取した毛髪を直近の3か月に伸長した部位にあたる頭皮側から3㎝に切りそろえ、質量および本数を測定する。毛髪を鋏と細胞破砕装置を用いて粉状にした。毛髪10mgに対してメタノールを1mL加え、後述する抽出条件による抽出を終えた後、抽出液を10,000rpmで2分間遠心し、上澄みを蒸発させ、残留物を緩衝液にて懸濁し測定サンプルとした。測定サンプルは免疫抗体法を応用した血漿コルチゾール測定キットを用いて吸光度を二重測定した。メタノールによる抽出時間は、1、2、4、8、12、14、16、18、20、24、28、32時間の12通りとした。抽出条件は50℃または室温で、さらに振盪の有無の組み合わせの4条件で、時間との組み合わせの計48通りについて6サンプルずつ測定した(n=288)。 2-プロパノールで3回毛髪を洗浄した後、乾燥する。金属マイクロチューブに対象者の毛髪とメタルクラッシャーを入れ、小片細胞破砕装置を常温で使用し、細かい粉状に粉砕する。粉砕した毛髪の質量を測定した後、50℃振盪ありの条件でメタノールに16時間浸漬し、抽出液を遠心後、上澄みを乾燥して得られた残渣を検体とする。高速液体クロマトグラフィー(HP-LC)で測定したコルチゾール濃度の検査結果を粉状毛髪の質量で除して、毛髪質量あたりのコルチゾール量を算出し、対象者の職業性心理ストレス要因の結果の関連を分析し、有意な差は認められなかった。
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