過去の公害と比較して現代の化学物質による人体汚染は相対的に低濃度曝露であること、並びに複合的な曝露等が想定されることから、今後は「生体の恒常性に対する攪乱作用物質」に焦点を絞り、その作用を有する環境・食品汚染物質の探索と生体毒性影響に関する研究が社会のニーズとなるものと推察される。特に、化学物質による免疫賦活化能の評価はin vivoに集中しており、in vitroにおける報告例は皆無である。本研究は、食事を介して非意図的に摂取した化学物質の第一次汚染部位である腸管粘膜において、そのバリア機能破綻能を有し、尚且つアレルギーの発症あるいは増悪作用をも有する化学物質の探索に極めて有用な、簡便・迅速且つ高精度なin vitroハイブリッド式検出法を開発するものである。昨年度の結果を受け、本年度ではヒトTリンパ球を用いた評価と、バリア機能を破綻させるダイオキシン類との共刺激による評価を行った。その結果、ヒトTリンパ球をOVAで刺激すると、IFN-gやIL-4といったサイトカインのmRNA量が上昇した。さらにOVAとダイオキシン類とで共刺激すると、IL-4のmRNA量は上昇し、その一方で、IFN-g mRNA量は減少することを見出した。これらのことより、バリア機能及び免疫賦活化能を同時に評価可能なハイブリッド式検出法の構築のための基礎情報を収集することができた。
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