研究概要 |
本研究では,企業における組織的公正(手続き的公正および相互作用的公正)が従業員の心身の健康(心理的ストレス反応や,高血圧,脂質異常症,糖尿病など,虚血性心疾患と関連する身体的健康指標)に与える影響を雇用形態別(正規社員/非正規社員別)に明らかにすることを目的として,1年間の前向きコホート研究を実施した。今年度は,昨年度にベースライン調査を実施した製造業の2つの工場に勤務する従業員を対象にフォローアップ調査を実施した。3,121名(男性2,262名,女性859名:フォローアップ率90.2%)が回答し,このうち,少数であった男性非正規社員(28名)およびデータに欠損値のあった50名を除外した,3,015名(男性正規社員2,185名,女性正規社員324名,女性非正規社員506名)を解析対象とした。その結果,男性正規社員および女性社員において,手続き的公正および相互作用的公正(が低いこと)と心理的ストレス反応(K6得点≧5点)との間に有意な関連が認められ,とくに男性正規社員では,ベースライン時の心理的ストレス反応を調整後も有意であった。また,女性社員においては,手続き的公正(が低いこと)と高血圧(収縮期血圧140mmHg以上/拡張期血圧90mmHg以上)との関連が有意傾向にあり,この関連はベースライン時の高血圧の有無を調整しても同様であった。更に女性社員を雇用形態別に分類した場合,高トリグリセリド血症(150mg/dL以上)に対する雇用形態と相互作用的公正との交互作用に有意傾向が認められ,正規社員は非正規社員に比べ,相互作用的公正と高トリグリセリド血症との関連がより強かった。尚,男女ともに組織的公正とコレステロール血症との間に有意な関連は認められなかった。本研究は今年度で終了となるが,上記の関連について強固なエビデンスを得るために,引き続き,長期的なフォローを行っていく必要がある。
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