DNAのメチル化異常を含めたエピジェネテッィクな因子による遺伝子発現の変化が、様々な疾患に関与することが近年報告されている。しかし、DNAメチル化異常誘発のメカニズムについては未だ不明な点が多く、特にDNAの脱メチル化機構については十分に理解されていない。そこで本研究では、近年能動的脱メチル化に関与することが報告されたDNA脱メチル化酵素が酸化ストレスに対しどの様な発現変動を示し、発現誘導された酵素が実際にDNAの脱メチル化に関与するか否か明らかにすることを目的とする。 これまでに酸化ストレス剤であるパラコートをマウス肝臓由来のHepa1c1c7細胞に曝露すると、能動的脱メチル化に関与することが報告されているAidの発現を強く誘導することが明らかになった。そこで今年度は、Aidを過剰発現させた細胞及びパラコート曝露によりAidの発現が誘導された細胞の遺伝子発現解析をマイクロアレイにより行った。その結果、Aidを過剰発現させた細胞及びパラコート曝露によりAidの発現が誘導された細胞に共通した12遺伝子の発現誘導が認められた。このことから、今回遺伝子発現の活性化が認められた12遺伝子が、酸化ストレス剤であるパラコートにより発現誘導されたAidによるDNA脱メチル化の影響を受けている可能性が考えられた。今後、これらの遺伝子のDNAメチル化状態を詳細に解析することで、酸化ストレスがDNAの脱メチル化に及ぼす影響について明らかにされることが期待される。
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