研究課題/領域番号 |
24790614
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
横道 洋司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (20596879)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 栄養疫学 / 栄養調査 / 食事摂取基準 / 習慣的摂取量 / 食事評価 / 栄養素 / 一般線形モデル / 食塩 |
研究概要 |
栄養調査では、母集団から標本を抽出し、標本の個人に対して栄養の摂取状況について調査が行われる。ある栄養素について摂取基準を満たさない者をその栄養素の栄養学的リスク者と呼ぶ。公衆栄養では、母集団における各栄養素の習慣的摂取量の分布(ヒストグラム)と、母集団における栄養学的リスク者割合が栄養施策上問題になるため、それらはこの栄養調査結果から推定される。 これらの推定には統計モデルが用いられている。代表的な既存の統計モデルとして、従来使用されているISU法(Iowa State University Method)や、WaijersらのAGE MODE法が挙げられる。本研究は、これら既存の方法の短所を克服し、より正確に習慣的摂取量の分布と栄養学的リスク者割合を推定する新たな統計モデルを提案することを目的としていた。 研究は、AGE MODE法を改良することから始めた。AGE MODE法は年齢を説明変数とし、個体間のばらつきや個体内の栄養摂取量の変動である日内変動を許す一般線形モデルから成る。しかし、AGE MODE法は母集団がもつ2つのばらつきである個体間変動と個体内変動を一定としているため、モデルのあてはまりが悪いとされる。吉池ら(Ishiwaki et al. J Nutr Sci Vitaminol, 2007)によれば、個体間のばらつきは年齢とともに増加し、個体内のばらつきは年齢とともに減少する。そこで、AGE MODE法を改良し、個体間と個体内のばらつきにあたる2つの分散も年齢の単調関数である一般線形モデルを拡張したモデルを構築し、AGEVAR MODE法と名付け、10000のデータセットを用意し、シミュレーションスタディにより既存の2法とAGEVAR MODEの優劣を検討した。なお、統計学では推定方法の優劣を調べるためにはシミュレーションスタディが必須となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、習慣的摂取量の分布と栄養学的リスク者割合をより正確に推定するための統計モデルを新たに構築することが目的である。まず取り組んだAGE MODE法の改良法であるAGEVAR MODE法は、シミュレーションスタディにより既存のISU法とAGE MODE法に比べて優れた性能を示し、結果は国際誌に発表した。 研究を進めるなかで、ISU法、AGE MODE法、AGEVAR MODE法には共通の弱点があることに研究代表者は気付いた。それは、1つには3法は栄養摂取量の生データを、そのヒストグラムが正規分布に近づくようにBox-Cox変換し、その変換値に対して回帰しているため、推定が2段階で行われていることであり、2つ目には置くべき仮定はBox-Cox変換した値が正規分布することではなく、説明変数により回帰された誤差項が正規分布しているべきであることであり、3つ目には栄養素毎に異なるパラメータによるBox-Cox変換をするのではなく、すべての栄養素で生データのまま統一した回帰モデルを用いることが望ましいことである。 そこで研究代表者は次に比例ハザードモデルのハザード関数とべきを組み合わせたモデルを毎日の栄養調査結果のBox-Cox変換しない生データにあてはめれば、上の3つの課題を同時に解決できるはずだと考え、現在その研究に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究でAGEVAR MODE法を開発する際にシミュレーションスタディ実行のためのシミュレーションデータ発生プログラムは完成している。 今後は次に取り組むハザード関数とべきを使った回帰モデルをデータにあてはめるためのプログラムを作成する。またそのプログラムにより吉池らの食事調査データを解析する。その統計モデルの推定性能を比較する目的で、シミュレーションスタディにより再度ISU法、AGE MODE法、AGEVAR MODE法、ハザード関数を使った方法との優劣を検討し、海外の学術雑誌に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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