研究課題/領域番号 |
24790617
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
デロスレイエス C 大阪大学, 人間科学研究科, 非常勤講師 (10599252)
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キーワード | 社会的決定要因 / 母子保健 / フィリピン / 先住民社会 |
研究概要 |
平成24年度に調査コミュニティとの間に再構築したネットワークを利用して、平成25年度にはパラワン州のコロン島において集中的なフィール調査を行った。2013年8月には、母子健康状況に関する質問紙を開発して、先住民であるタグバヌア族の母親67人を対象としてサーベイ調査を行った。加えて、コミュニティのキー・インフォーマントにインタビューを行うとともに、フォーカスグループ・ディスカッションを行い、コミュニティの母子健康の状況に影響を与える社会的決定要因を特定するように試みた。これらの調査対象者には、母親、伝統的な医療サービス提供者、地域のヘルス・ボランティア・コミュニティの助産師、長老、先住民リーダーが含まれる。フィリピン大学・公衆衛生学院の前教授で、フィリピン保険調査開発局のマリリン・クリソストモ氏に、データ収集およびデータ分析の段階において、調査協力者および統計解析専門家として参加していただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の調査計画が目的としていたのは、データ収集を有効に進めるための適切な調査方法の開発であり、それに基づく初期データ収集にあった。フィリピン先住民コミュニティの母親を対象とした質問票を開発し、質問紙サーベイを行ったことで、この目標は達成されたと言える。今回利用したインタビュー手順は、現地の助産師とヘルス・ボランティアの協力の下に考案されたものである。「コミュニティに基礎を置く参加型研究」に忠実であるためには、フィールド調査における初期データや発見を、島内のコミュニティ構成員やキー・ステークホールダーに提示し、共有することが望まれる。この点については、昨年のハイヤン台風による災害が起こったため、コミュニティにおける優先順位が災害復興に傾き、残念ながら達成することができなかった。平成26年度においては、収集したデータをコミュニティ構成員とともに分析し、母子保健に関する活動とプログラムを開発することを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究目標は、コロン島のタグバヌア・コミュニティにおいて実現可能な母子健康活動を開発することにある。この目標は、平成25年度に行った調査結果を、複数の学会で報告したことで具体化した。コミュニティに基礎を置く参加型研究のプロセスにおいては、知識の生産がコミュニティにおいて新たな価値観を生み出すのかという点と、その価値観がコミュニティの母子健康保健の改善に必要となる健康活動にいかにうまく組み入れられるかがポイントとなる。タグバヌア・コミュニティに適合した母子健康保健のプログラムと母子保健への介入方法が、コミュニティ構成員とともに明らかにされる。可能であれば、島内のステークホールダーとの間で、共同でワークショップを開催し、伝統的な母子健康ケアと専門的なそれとを結び合わせるかたちで、コミュニティに適合的かつ実行可能な母子保健プログラムを開発するよう試みたい。本科研調査の最終報告作成においては、先述のクリソストモ教授に、この科研で行った「コミュニティに基礎を置く参加型研究」に対して、健康プログラムマネジメントと生物静力学の専門知識を生かした評価をお願いしている。評価の結果は、タグバヌア・コミュニティで発表することになっている。コミュニティへの還元を通して、コミュニティ内部での反響を期待したい。また、母子健康保健と社会的決定要因との関係、および「コミュニティに基礎を置く参加型研究」の活動に関する最終報告を完成させ、地域社会と全国レベルの保健機関に配布する。
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