研究課題/領域番号 |
24790626
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
吉田 穂波 国立保健医療科学院, 生涯健康研究部, 主任研究官 (20626113)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 母子保健 / 災害対応 / 少子化対策 / 研修研究 / 周産期救護 / 防災対策 |
研究概要 |
東日本大震災後に日本プライマリ・ケア連合学会派遣医師として宮城県に赴き、母子保健分野の復旧や、妊産婦・乳幼児へのケアをサポートした経験から、その知見を後世に活かすため、災害時にも耐えうるような母子保健システムの準備、多職種による母子救護研修・訓練内容の整理を行うため、まずは東日本大震災時の妊産婦・乳幼児対応について調査を行った。また、平成24年4月より12月までの間で、被災地の市町村における発災時の分娩取り扱い状況について既存の文献及び公的報告を調べ、実際に分娩を取り扱った被災地の保健師、助産師にインタビューを行った。平成24年9月には自治体と連携した母子救護・母子保健回復・地域復興プログラムを立案し、11月より産婦人科医師、助産師、消防庁、DMAT、自治体など関係者を交え災害対応に関する調整を行った。その一方で、平成24年9月中旬に宮城県石巻市でAdvanced Life Support in Obstetrics(ALSO)・Basic Life Support in Obstetrics(BLSO)(災害時周産期ケアプロバイダー研修)を開催し、石巻市の受講生(ALSO: 産婦人科医、救急医師、助産師、看護師、BLSO: 保健師、救急救命士)を対象としたアンケート調査を実施。調査結果の統計学的解析を行い、災害時の多職種連携妊産婦救護に資するような研修内容の追加、改善を行った。平成25年1月21日には、東京都文京区で母子避難所および妊産婦・乳児救護所運営セミナーを開催し、産婦人科医師、助産師、消防庁、DMAT、行政官、警察官、大学関係者を対象にHUGやBLSOなどシミュレーショントレーニングを行った。その研修におけるアンケート調査からのフィードバックや改善点を明らかにし、研修内容の改善を図り、平成25年4月から文京区で事業化された妊産婦・乳幼児避難所運営への準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定されていた研究内容では、災害に対するPreparednessのうちでも、災害時の母子のレジリエンスを強化し、母子の健康への被害をできるだけ少なくし、少子高齢化をますます増悪させないような備えを作ることであった。母子災害支援研修プログラムの実施および,研修に対する評価を行うことで,一定水準以上の知識や技術,態度をもつ周産期医療支援チームを育てる研修を行い、地域の行政と医療従事者が連携して妊産婦や乳幼児のケア,地域・家族機能の回復を効果的に支援することができるようになると考えられる。災害時の妊婦、授乳婦、乳児の受け入れ、災害対応について母子救護で計画すべき内容とは、各地方自治体(二次医療圏)における母子救護を専門とする場所、安全な飲料水(煮沸)、食糧、母乳育児援助に精通した人員の確保、哺乳瓶、乳首などの洗浄(カップ)、最低限必要な物品の備蓄、災害時に対応できる産婦人科医、小児科医の配置について平時から定めることである。本年度では災害時母子対応を念頭に置いて40名の受講生(医師やその他の医療プロバイダー)が、周産期救急に効果的に対処できる知識や能力を発展・維持するための教育コースであるALSO・BLSOを受講した。また、東京都文京区では母子救護の意義に共感した防災課・危機管理課・保健衛生課と合同でくと関係機関の協定を取り交わし、関係者を対象に災害時母子救護研修を開催することができ、具体的に機能する災害時母子保健システムの成立へと前進がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、被災地の避難所および病院における防災状況、被害の程度、周産期アウトカムを調査し、データ入力し、解析する予定である。また、石巻医療圏合同チームの災害医療カルテ45000件分のデータより、救護所を受診した妊婦、および、乳児の診療経過を解析し、災害直後に必要となる母子ケアの内容について把握し、備蓄品や派遣者に必要となるスキル、医療知識についてまとめ、研修内容に盛り込む予定である。避難所における周産期アウトカムに関しては、引き続き病院外での産科診療に関し、震災当日に避難所や半壊住宅で分娩介助をした保健師、助産師にインタビューを行い、災害下での分娩状況につき解析を加える。震災後に石巻医療圏合同医療チームで共同支援活動を行った災害医療専門家より、災害時要援護者への支援、災害1週間後から4週間後までの支援における研修内容の開発と研修講師を依頼されているため、国立保健医療科学院での災害時公衆衛生訓練とともに、災害医療コーディネーター向け研修、地域保健医療行政対象研修などを組み合わせ、異なる分野・組織・部署の人員が母子を守るチームとなって機能できるような研修内容を組み立てていく予定である。今後、母子保健に特化した研修プログラムの効率性や効果について評価を行い、より普遍性のあるものとして今後の震災に応用できるように改善して行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本災害医学会、日本産婦人科学会、日本周産期・新生児学会への演題発表及び学会参加に対して共同演者の交通費や宿泊費も含めて約30万円、妊産婦・乳幼児救護研修開催(講師の交通費、謝金、備品・消耗品代)に約25万円、研究班会議で約15万円、備品・消耗品(約10万円)、人件費(約70万円)、交通費(約30万円)、論文投稿および英文校正代金(約30万円)などで合計210万円を使用する見込みである。
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