研究課題/領域番号 |
24790628
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
瀬戸 僚馬 東京医療保健大学, 医療保健学部, 講師 (20554041)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 病棟業務支援システム / オーダエントリシステム / 臨床指標 / 看護支援システム / 糖尿病 / 国際情報交換 / 英国 / シンガポール |
研究概要 |
本年度は、病棟業務支援システムから収集されるデータに関し、3病院を対象に多施設比較可能性の検証作業を行った。 この際、全入院患者に対し漠然とした評価を行っても臨床的に意義が乏しいことは前年度までの研究で明らかになっているため、患者数がきわめて多い糖尿病患者を中心にケアに関するデータ抽出を行うこととした。 一般に、糖尿病に関する診療上の指標としてはHbA1Cなどが用いられ、合併症予防などの副次的指標としてはeGFRなどが多用されている。他方で、これらの最終的な目標に至るまでの日々のケアに対する評価軸としては、ガイドラインに沿った血糖測定の実施率など、多様な設定が可能であり、これらの指標に臨床的な妥当性は確保可能であった。他方、これらのデータの抽出は、例えばオーダエントリシステムにおいて「予定情報」と「実施情報」の双方が揃っていない事例があるなど、多施設比較可能性を妨げる技術的課題が残っていることも明らかになった。 そこで、研究協力者との研究班会議を繰り返し、海外事例等も含めて「病棟ケアに関するデータの発生および収集プロセスの適正化」を如何に進めるべきか議論を進めた。例えば英国では、「糖尿病患者への受診勧奨」の実施履歴を残すのは、コーディング業務に特化した診療情報管理士あるいは医療秘書(わが国における医師事務作業補助者)であった。また、シンガポールでは、重要なデータは自動血圧計など、生体デバイスから直接収集することを優先していた。 このことは、医師や看護師が「病棟ケア」に関する緻密なデータを残すには限界があり、それを人的あるいは技術的な方法で補完する必要があることを示唆している。したがって、病棟ケアの質に関するデータセットを構築する際には、それらのデータの生成が「生体デバイスによる自動生成」「医療職による手入力」「代行入力」の何れによるべきかを併せて明示することが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画に則り、発生頻度の高い疾患を中心に病棟ケアの質に関する指標の構築を行った。 臨床的観点からの指標構築はきわめて順調であり、糖尿病専門医等との意見交換も含めて今後も積極的に推進していく予定である。他方、本年度の研究で抽出した指標は、多施設比較可能性を確保できるものではあったが、データ生成上の課題も多く、その解決策は次年度以降に解決していくことになる。 よって、若干の課題は残るものの、病棟ケアに関するミニマムデータセットという最終目標からみれば、海外事例などを踏まえた議論も進んでいることから、おおむね順調に進展しているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
病棟ケアの質指標に関して多施設可能性を確保するためには、データの生成過程を標準化する必要があることが明らかになっている。ここで、生体デバイスによる自動生成はきわめて有効な解決策と考えられるため、この点を実現する方策を含めて、多施設可能性の確保策を引き続き議論していきたい。 その一方で、当初の研究計画に従い、患者・市民による病棟ケアに対する情報需要の把握なども同時に実施していきたい。情報需要を把握する手段については、単にインターネットによるアンケート等では十分とはいえないことから、既存の情報媒体を題材としたテキストマイニングなど、多角的に検討していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の研究において、生体デバイスを用いたデータ生成と、そのデータを通じた病棟ケアの質評価のための方法論が示唆された。よって、本年度も、引き続きデータ生成過程を標準化するためのフィールドリサーチに重点を置き、必要な人件費や旅費等に経費配分したいと考えている。 他方、研究成果がおおむね順調であることから、可能な範囲で、国際学会等へのアウトリーチ費用も支出していきたいと考えている。
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