研究課題/領域番号 |
24790628
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研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
瀬戸 僚馬 東京医療保健大学, 医療保健学部, 講師 (20554041)
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キーワード | 病棟業務支援システム / 臨床指標 / 看護支援システム / 生体デバイス / RFID / 情報需要 / 国際情報交換 / 英国 |
研究概要 |
本年度は、ミニマムデータセットの構築に向けて、多施設での比較可能性を重視したデータ抽出及びデータの安定性等の検証作業に注力した。その結果、日常生活援助等の業務では用いられている用語が標準化されていないため、単に病棟業務支援システム等で「実施入力」されたデータを用いるのみでは、同一の行為や状態を、安定的に表現できない可能性が示唆された。 他方、ユビキタス技術の発展に伴い、病棟業務支援システムには、看護師等が実施入力したデータに限らず、RFIDやバーコード等で認証したデータを取り込める可能性も把握できた。また、英国での海外事例調査では、モバイルデバイスを用い、患者自ら操作したペインスケールの値をデータとして取り込むような事例があることも明らかになった。このような生体デバイス由来データの利用を探索するため、中小規模の病院において、医療従事者(ヒト)および情報媒体(モノ)のトレーサビリティを調査した。この調査において、対患者業務の時間を自動生成するなど、多様な質評価指標の可能性が描出された。 患者・市民の情報需要については、インターネットを重視する層と、それ以外の層では異なる情報需要を持つことが先行研究でも指摘されている。これを踏まえ、本年度は新聞記事を用い、患者・市民が医療の質に対して、どのような情報需要をもっているか調査した。 現状、生体デバイスから得られる情報と、患者・市民の情報需要の間には、まだ乖離がある。その原因として、情報の粒度が異なることも大きな要因であるため、病棟ケアの質に関する情報について、粒度を変換する仕組みを考えていくことも今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目となる本年度は、研究計画に則り、病棟ケアの質に関する評価指標の抽出と、ミニマムデータセットの構築に注力した。 その過程では、看護師等の実施入力を前提とする「病棟業務支援システム」から抽出できるデータに一定の限界があることを明らかにしつつも、生体デバイスから派生するデータを用いることで補完する方法の議論に進んでおり、むしろ有効なデータ抽出方法の開発に至っている。 また、病棟ケアの質に関する患者・市民の情報需要については、インターネット利用頻度が必ずしも高くない市民の需要について実施し、国際学会での発表も行うことができた。 これらを総合すると、病棟ケアの質評価指標の構築については、ほぼ研究計画通りに遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は、病棟ケアの質評価のためのミニマムデータセットを、どれだけ多くの病院に適用できるか、検証する作業に重点を置く予定である。 これまでの研究で、生体デバイスの情報を活用する方向性が示唆されてきていることから、その活用についてはさらに多くの医療機関、及び病棟業務支援システムに関するベンダー等の研究協力者との研究班会議を行い、さらに比較可能性を模索していきたいと考えている。 また、比較的粒度の荒い患者・市民の情報需要と、粒度の細かい実データとの橋渡しをする仕組みについても、検討を進めていく予定である。 研究全体の進捗状況を踏まえ、昨年に引き続き、国際学会等での報告についても、考慮したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の計画は、概ね計画通りに遂行している。現在、その成果報告の準備を行っており、当該経費の執行が、次年度に持ち越されている。。 本年度の成果報告に際し、英文校正の必要を支出する予定である。
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