最終年度となる平成27年度は、病棟ケアの質に関するミニマムデータセットの体系づくりを重点的に行った。 まず、生体デバイスから発生するログデータを質評価に応用する際の課題を、国内及びシンガポールの、生体デバイス、病院情報システムおよび診療情報管理の専門家とともに検討し、あわせて実際にナースコールシステムに集約される離床センサーのログ等を用いて質指標への転換可能性について検証した。その結果、デバイス由来情報にはデータ構造等が標準化されやすいという利点がある一方で、病棟の看護職や介護職が観察を実施したとの情報がないため診療情報としての真正性に欠けるという限界も明らかになった。このためログデータについては、観察者情報等を構造化して付加することが、質評価に用いる際の要件になると考えられた。 次に、ミニマムデータセットを構成する質評価データの粒度について最適解を得るため、同分野で先進的取り組みを行っている英国国民医療(NHS)の事例を援用することとした。実地調査の結果、質評価のデータ収集には多大な労力を要することから、データ収集及び活用を段階づけし、より多くの病院がその病院の体制に応じて質評価を実施できるように配慮していることが明らかになった。すなわち、データの粒度についても多段階で設定する必要性が示唆された。 なお、研究期間中に医療介護総合確保推進法が成立し「病棟」の区分等についても見直しが行われた。本事業は医療法上の「一般病棟」と「療養病棟」を主な対象として議論を進めてきたものであるが、その中間領域となる病棟の質指標については今後の検討を要するところである。
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