研究実績の概要 |
平成26年度は、前年度までの研究結果を踏まえ、若年者が身近な他者の自傷行為に遭遇した際の援助における過度な回避・没入傾向を測定する尺度(自傷行為に対する非適応的援助態度尺度)の作成とその尺度の妥当性・信頼性の検討を行うことを目的に研究を実施した。 具体的には、まず、大学生を対象に平成25年度研究で作成した18項目からなる「自傷行為に対する非適応的援助態度尺度」について5件法で回答を求め、「自傷行為に対する非適応的援助態度尺度」の因子構造および各因子の内的一貫性について検討を行った。次に、「自傷行為に対する非適応的援助態度尺度」に修正を加えたうえで、その妥当性を確認するため、大学生・専門学校生を対象に調査を実施し、一体感尺度(Aron, 1992)、BIS/BAS尺度(高橋ら, 2007)、認知的統制尺度(甘利・馬岡, 2002)、多次元共感測定尺度(桜井, 1988)といった既存の心理尺度との関連性を検討した。 近年、若年者の自殺予防対策として世界各国でピアサポートを用いた自傷行為や自殺を予防するための教育プログラムの開発が進められている。わが国でも、自殺対策基本法制定にともなって文部科学省が設置した「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(「児童生徒の自殺予防に向けた取組に関する検討会」から改称)」の検討結果を踏まえ、平成26年7月に「子供に伝えたい自殺予防~学校における自殺予防教育導入の手引き~」が公開されたが、本研究の成果はこうした自傷・自殺予防教育の効果を評価するための重要なツールとして今後幅広く活用されることが期待される。
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