研究課題/領域番号 |
24790634
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
加藤 友紀(外山友紀) 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 予防開発部, 研究員 (20329650)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 中高年者 / アミノ酸摂取量 / 認知機能 / 知能 / 長期縦断疫学研究 |
研究概要 |
本研究では、無作為抽出された地域住民の大規模集団を対象とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」を基に、日常的に摂取するアミノ酸量を明らかにし、知能や認知機能へどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的とした。本年度の研究成果を以下に記す。 1.たんぱく質摂取量の94.5%をアミノ酸摂取量で説明可能な「NILS食品アミノ酸組成表2010」を独自に構築した。これを用いて、上記集団の各アミノ酸摂取量およびアミノ酸のグループ別摂取量を算出した。「日本人の食事摂取基準(2010年版)」記載の必須アミノ酸推定平均必要量と比較したところ、一つでも必要量を下回った者は男性5名、女性3名で、リジン、ロイシン、バリン、イソロイシン、スレオニンで、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸では必要量を下回る者はいなかった。アミノ酸摂取量に影響を与える背景要因としては、教育年数、喫煙歴、結婚歴、除脂肪量が抽出された。 2.中高年者のアミノ酸摂取量が認知機能に及ぼす影響について横断解析を行った結果、女性ではシスチン、メチオニンを除いた全てのアミノ酸で摂取量が多いほど、認知症疑い有り(MMSE≦23)のリスクが有意に低かった(オッズ比:0.44~0.62倍)。男性では認知機能に対して有意な関連を示したアミノ酸はなかった。 疫学調査での食事記録法では、従来、アミノ酸摂取量を推定することが困難であったが、たんぱく質摂取量の94.5%をアミノ酸摂取量で示すことができる成分表の開発により、今回我が国で初めて地域住民中高年者のアミノ酸摂取量を推定することができた。一般地域民のアミノ酸摂取量から中高年女性の認知機能低下と有意な関連のあるアミノ酸が見出せたことは、認知機能やQOLの低下による介護負担が問題視されている現代日本にとって重要な知見である可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、中高年者の日常的に摂取するアミノ酸量や比率などを明らかにし、知能や認知機能へどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的としている。 初年度である平成24年度では、一般地域住民のアミノ酸摂取量を算出し、同時にアミノ酸に影響を与える背景因子を抽出すること、また、アミノ酸摂取量が認知症の疑いの有無(MMSE得点)に与える影響について横断的に解析することを計画した。 「NILS食品アミノ酸組成表2010」を現行の「日本食品標準成分表2010」に準拠するよう再度改善し、たんぱく質摂取量の94.5%をアミノ酸摂取量で説明可能な食品アミノ酸成分表を完成した。現在、論文投稿中であり、成分表の公表準備を進めている。 また、この「NILS食品アミノ酸組成表2010」を用いて地域在住中高年者の正確な一日平均アミノ酸摂取量を明らかにし、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」記載の推定平均必要量と比較したことは、我が国で初めての報告であり、重要な知見であると考える。アミノ酸摂取量に影響を与える要因として教育年数、喫煙歴、結婚歴、除脂肪量が抽出できたこと、一般地域民のアミノ酸摂取量から中高年女性の認知機能低下と有意な関連のあるアミノ酸が見出せたことは当初の計画通り順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、知能または知能の各側面(知識、類似、絵画完成、情報処理)を評価できるWAIS-Rを用い、アミノ酸摂取量が知能や知能の各側面にどのような影響を及ぼすかを明らかにする。アミノ酸摂取量や外挿値など投入したモデルによりアミノ酸摂取量と知能の各側面との直接的な関連を横断的な解析を行う。大規模疫学調査の利点を最大限生かし、病歴や身体活動量、社会学的因子など、アミノ酸摂取量および知能・認知機能に影響を与える因子を考慮した解析モデルを構築する。 平成26年度は得られた知見をもとに、特に縦断解析を中心とし、アミノ酸摂取量や相対的比率が知能の各側面や認知機能といかなる関連を有するかを明らかにする。知能の各側面の得点を目的変数とした線形混合モデルにより、個人差、個人間差を考慮した解析を行い、12年以上にわたる同一プロトコールを用いた長期縦断疫学調査より、認知機能低下に寄与するアミノ酸の種類と量を明らかにする予定である。これにより、認知機能低下予防に資する日常的なアミノ酸摂取量の栄養疫学的エビデンスが得られると考える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、大規模集団を対象とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」が2012年7月に一旦終了したため、人件費の支出が抑えられ、平成25年度に繰り越した。 平成25年度には追跡調査を再開する予定で有り、繰り越した研究費は主に人件費や研究成果発表に用いる予定である。
|