研究課題/領域番号 |
24790634
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
加藤 友紀 (外山 友紀) 独立行政法人国立長寿医療研究センター, NILS-LSA活用研究室, 研究員 (20329650)
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キーワード | 中高年者 / アミノ酸摂取量 / 認知機能 / 知能 / 長期縦断疫学研究 / 3日間の食事秤量記録調査 |
研究概要 |
本研究では、無作為抽出された地域在住中高年者を対象とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」を基に、日常的に摂取するアミノ酸量が知能や認知機能へどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的としている。本年度の研究成果を以下に記す。 1.「NILS食品アミノ酸成分表2010」の公表及び公開:独自に構築したたんぱく質摂取量の94.5%をアミノ酸摂取量で説明可能な「NILS食品アミノ酸成分表2010」の構築方法および上記集団の各アミノ酸摂取量を栄養学雑誌に公表した。また「NILS食品アミノ酸成分表2010」はHP上で公開し、ダウンロードを可能とした。従来、アミノ酸摂取に関して疫学的エビデンスが少なく、摂取基準値も策定されていない我が国において、日常的に摂取するアミノ酸量を詳細に算出できる成分表の公表は、栄養疫学的意義は大きいと考える。 2.中高年者のアミノ酸摂取量と知能の関連:横断的解析にて食品群別摂取量または動物性食品、植物性食品由来のたんぱく質摂取量が知能・認知機能へ与える影響が異なったため、動物性、植物性食品由来のアミノ酸に分けて解析を行った。ウェクスラー成人知能検査改訂版(WAIS-R)の知能の各側面の得点を目的変数とし、中高年者の知能の10年間の加齢変化にアミノ酸摂取量が及ぼす影響について検討した。知能の一つの側面である「知識」得点(一般的な事実に対する知識量)に対して、男女ともに動物性食品由来プロリンを多く摂取していた群では少ない群に比して知識の獲得、維持が良好であった。一方、植物性プロリンでは知識の維持、獲得と有意な関連はみられなかった。この結果は単にアミノ酸そのものの知能への影響だけでなく、アミノ酸が由来する食品にも知能に対する効果があることを示唆するものであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、中高年者の日常的に摂取するアミノ酸量や比率などを明らかにし、知能や認知機能へどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的とした。 平成25年度の研究計画は、知能または知能の各側面(知識、類似、絵画完成、情報処理)を評価できるWAIS-Rを用い、アミノ酸摂取量が知能や知能の各側面にどのような影響を及ぼすか直接的な関連を中心に明らかにすることであった。 平成25年度の研究計画に対して、横断解析より動物性食品および植物性食品由来のアミノ酸摂取量が知能や認知機能に対して異なる影響を与えることがわかった。そこで、縦断解析では知能の各側面(知識、類似、絵画完成、情報処理)得点の10年間の加齢変化に動物性食品および植物性食品由来のアミノ酸摂取量が及ぼす影響について検討した。その中で、知能の一つの側面である「知識」得点(一般的な事実に対する知識量)の10年間の加齢変化に対し、得点の獲得、維持に男女ともに動物性食品由来のプロリン摂取量が有意な関連を示した。これは、日常的なアミノ酸摂取量が知能低下予防に資する栄養疫学的エビデンスとして、日本未病システム学会にて発表、論文化し公表した。 また、平成24年度の研究成果として「NILS食品アミノ酸成分表2010」を論文およびインターネット(国立長寿医療研究センターNILS-LSA活用研究室HP:http://www.ncgg.go.jp/department/ep/amino.html)にて公表した。 今年度の研究は、前年度の計画も合わせおおむね当初の計画通り順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は得られた知見をもとに、特に縦断解析を中心とし、アミノ酸摂取量や相対的比率が知能の各側面や認知機能といかなる関連を有するかを様々な解析方法で縦断的に検討する。具体的には、線形混合モデルなど個人差、個人間差を考慮した解析を行い、15年にわたる同一プロトコールを用いた長期縦断疫学調査より、加齢に伴う知能や認知機能低下に寄与するアミノ酸の種類と量や関連要因を明らかにする予定である。これにより、認知機能低下予防に資する日常的なアミノ酸摂取量の栄養疫学的エビデンスが得られると考える。 さらなる課題としては、アミノ酸摂取量や相対的比率の崩れやすい高齢者や有病者、独居高齢者などに対象としたアミノ酸の摂取不足がリスクとなる対象群での検討を考えている。 得られた研究成果は積極的に英文雑誌に投稿する予定である。また、平成25年10月より、大規模集団を対象とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の追跡調査を再開したため、平成26年度に繰り越した研究費は主に人件費や研究成果発表に用いる予定であり、連携研究者(下記)の協力も必要である。 連携研究者: ①名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科、下方浩史:疫学研究の運営、統括、②愛知淑徳大学健康医療科学部、安藤富士子:疫学研究の運営、統括、③同志社女子大学生活科学部、今井具子:栄養調査のデータ解析支援、④(独)国立長寿医療研究センターNILS-LSA活用研究室室長、大塚 礼:栄養調査の企画・データ管理、⑤(独)国立長寿医療研究センターNILS-LSA活用研究室研究員、中本真理子:追跡調査のデータ解析支援
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年7月に、大規模集団を対象とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」が一旦終了したため、人件費の支出が抑えられ、平成25年度以降に繰り越した。 平成25年10月には追跡調査を再開し、当該年度の人件費の計上額を使用したが、平成26年度は追跡調査を引き続き行う予定であり、交付申請時計上額よりも人件費・謝金の支出が増加する見込みである。また、得られた研究成果についても、英文雑誌、オープンアクセス雑誌などに投稿する予定であり、計上額を上回る事が予想されたため、平成26年度に481千円繰り越した。繰り越した研究費は主に人件費や研究成果発表に用いる予定である 交付時申請当初の平成26年度における人件費・謝金の計上額350千円、その他(論文掲載料、印刷費、通信費)計上額200千円に、繰り越した481千円のうち、320千円を人件費・謝金、その他に161千円を上乗せして平成26年度は研究を遂行し使用する計画である。すなわち、繰り越した研究費は主に人件費や研究成果発表に用いる予定である。
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